春の風に吹かれて Vol.11

「夫と2人きりになると、何していいのか…」結婚して3年、久しぶりに夫婦で外食した35歳妻の憂鬱

東京の女性は、忙しい。

仕事、恋愛、家庭、子育て、友人関係…。

2023年を走り抜けたばかりなのに、また走り出す。

そんな「お疲れさま」な彼女たちにも、春が来る。

温かくポジティブな風に背中を押されて、彼女たちはようやく頬をゆるめるのだ――。

▶前回:仕事を理由に旅行をドタキャンしてきた彼氏。女が本音を漏らしたら、電話を切られて…


朱美(35) あの頃の気持ちに戻って…


― なんか、思ってたのと違う。

日曜の朝、6時45分。

初台にある3LDKマンションのリビングで、朱美は重たい肩を回しながらため息をついた。

寝室から聞こえてくるのは、夫・俊春のいびき。横には、3歳の娘・莉子が寝ている。

― …疲れたなあ。

朱美は、社用のノートPCを開き、濃いめのコーヒーを一口流し込んだ。

新卒から勤めている自動車メーカーのマーケティング業務が、相変わらず忙しい。

産休育休から復帰して約1年。慌ただしさは、今がピークだ。

― ちょうど、私が職場に戻ったタイミングで、チームにいた若手2人が転職してしまったからなあ。

朱美は時短勤務なのに、1人分の戦力としてカウントされている。

チームには子どもを持っている人がいないため、「時短勤務だから仕事を減らしてほしい」とは言いづらい。それで、土日に仕事を持ち込むのが当たり前になっていた。

「よーし、早く終わらせよう」

夫の俊春は、同じ会社の1つ上の先輩だ。社内で最も忙しい営業部にいて、残業も多く、彼もまた土日に仕事をすることが多い。

互いに忙しいのは重々承知だから、家事も育児もお互いに協力するようにしてきた。

だが、あまりにパツパツの暮らしで、最近の朱美はキツい。

― なんか…パンク寸前って感じ。

流れるように時間は過ぎ、切迫したまま夕方になった。

莉子が昼寝をしている間に、朱美は食器洗いを、俊春はリビングの拭き掃除をしている。

そのとき、ふと俊春が言った。

「あのさ。最近の僕たちってさ…」

何となく嫌な予感がして、朱美は、流していた水道を止める。

この記事へのコメント

Pencilコメントする
No Name
三つの夢の一番が「子供が欲しい」

でも今娘3歳で結婚して3年半、授かり婚ですよね?!
2024/04/17 05:2034返信3件
No Name
火曜更新『あの街?連載』は打ち切りになったのですか?
昨日アプリ開いたらPR小説しか読めるのなくてがっかりしました。毎日一連載しかない中、急な打ち切りは仕方ないにしても代わりに読めるお話をUPして欲しかったです。ご担当の方、今回だけ更新を休む等であればお手数でも事前に告知してくさい。決まった時間に読むのが日課になっている読者も多いかと思うので、是非! 
2024/04/17 05:3831返信4件
No Name
だから、どうして前週の主人公がわざとらしく出てくる?笑
それで今日の主人公が大きく心を揺さぶられると言うか影響される話にするんだろう? そこがものすごくチープでいい話が台無しに。
2024/04/17 05:1629返信3件
もっと見る ( 22 件 )

【春の風に吹かれて】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo