青山で再始動した名店のシェフに聞いた!愛され続ける“ドンチッチョ”らしさとは?

楽しさも味付けのひとつ。シチュエーションの妙をシチリア時代に体感した


フィレンツェやボローニャでも働き3年後に帰国。

『クチーナ ヒラタ』などを経て『ラ・ベンズィーナ』でシェフを任された後、2000年に独立して外苑前に『トラットリア ダ トンマズィーノ』を開いた。瞬く間に人気店となりパワーアップする形で2006年、渋谷二丁目に“ドンチッチョ”をオープン。

自身の店で実現したかったのは、シチリア時代に何度も目にした“楽しい食事”の光景だった。

「楽しさは味付けのひとつ。シチュエーションって大事で、例えば海の隣で波の音を聴きながら食べたら、“やっぱり魚介は美味しいよね”と思う。ひとり真っ暗な部屋で食べるのとはわけが違う。

シチリアに行って一番感じたのは、楽しさがいかに食事にとって大切かということ。

あと、楽しくなる店の人は、仕事をちゃんとやりつつお話上手。やっぱ、あのフレンドリーさだね。そこを目指しているから、従業員とお客さんの立ち位置が近いのがうちの特徴かな。

といってももちろん対等ではなくて僕らが下。でも、お話をして、お客さんと仲良くなれるように努めてはいます」

空間にも明るい気持ちになる要素をちりばめた。

旧店と同じイタリア雑貨が並ぶ店内


前身となる店からこだわったのは軒下がある物件であること。イタリアみたいに夜でも外で気持ち良く食事をしてほしかった。

オレンジやレモンの名産地であるシチリアらしく、壁は柑橘を思わせるレモンイエローに。装飾の多くはイタリアで買いつけたもので、石川さんの趣味そのものだ。

漁師を描いた鮮やかなタイルや守り神の陶器、サッカークラブのタオル、ワインボトルetc.

現地のカルチャーを表すものが勢ぞろいし、絶妙なランダムさで置かれている。本当にセンスのある人でないと作れない部屋だ。

本人は「ただのイタリアかぶれ(笑)」と言うが、カジュアルな格好でもお洒落オヤジと丸分かりなのである。

そんなシェフの店だから、場所が変わっても世界観は保たれる。「青山一丁目に移転オープンした時、“新しいお店じゃないみたい”と言われたのがすごく嬉しかった」と石川さん。

常連がほっとしたのは前とそっくりなカウンター席があることだ。それもまたイタリア的ホスピタリティの表れである。

「ひとりのお客さんは心細いじゃないですか。シチリアで僕がひとりで食事をしていた時に寂しくなかったように、スタッフと話したりしてひとりでも楽しく過ごせるカウンターにしたい。

“ちょっとカウンターでひとりで食べたいな。あ、あの店があるじゃん”と思われる場所でありたい」

ちなみにカウンターはデートにも効果的で、カップルの指定も多いとか。

「カウンターって隣に座れるから、とりあえずいやらしく、いや、いやらしくじゃないな(笑)。向かい合うより距離感が近くて喋りやすいでしょ。特に初めてのデートじゃ緊張するかもしれないし、隣の方が気楽なはず」

加えて照明がLEDではなく、ノスタルジックな暖色の電球だから、肌がとてもきれいに見える。目にも女性にも優しい環境なのだ。

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