2011.06.21
SALON DE KAPPA
新しいことを始めたいなら
年齢や時期は、関係ない。
料理人人生を全うできる人は幸いだ。多くの壁や障害。それらを乗り越え、自ら新しい世界を拓くこと。容易ならざるそれを、軽やかにあの人が始めた。
田口昭夫シェフ。実直な味わいとソフトな物腰で多くのお客を三軒茶屋『グッチーナ』に惹きつけた彼が、昨年麹町に『サロン・ド・カッパ』を開いた。昼は欧風カレー、夜はイタリアンの二毛作。意外な取り合わせには歴史と意味がある。
若き日、父の勤務先だった病院の喫茶店用にと頼まれたカレーのレシピが、殊の外、好評に。それは若き料理人にとって自信の礎のひとつとなった。『グッチーナ』開業当初、ランチで提供したこともある。タマネギなどをじっくり炒め、赤ワインや蜂蜜を加えてほどよく焦がし、肉と香辛料を入れて煮込む。ベース作りに1週間かかるカレー。深い味わいは、初対面で別れた後、もう一度振り返って存在を確かめたくなるような余韻を残す。
目玉は決まった。麹町では南イタリアで修業した木村秀行シェフを迎え、イタリアンも提供。来年には都内にカレー店を幾つか出す。彼の腕と人脈と情熱ゆえに、青写真はどんどん現実になる。加えて「なぜこんなに美味しいものを、お客さまにお出ししないの?」と言う、妻の存在ゆえに。
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