
隣のテーブルからふわりと漂う藁とトリュフの香り、横目で覗けばジューシーな肉厚の豚が煙と共に鍋から取り分けられる、まさに瞬間である。
「あれ、おいしそうだね」
周囲のテーブルからそんな声が聞こえて来る。お店が特別な一品を作るのではなく、お客様に選ばれた料理がスペシャリテとしてお店を作る。そんな店の信念を象徴する逸品こそが、ロゼ色に焼きあげられた名物「山形産の金華豚のアロスト」だ。
そう、いわゆるリストランテではない一軒家だけが持つ、親しみ。まるで友人宅を訪ねた際の時間を忘れる安堵感もまたこの店が愛される所以だ。
「料理はイタリアン+フレンチのいいとこ取り。夏はテラスもおすすめ。料理とそれに合うお酒を、ゆったり楽しんでいただく以外、決め事は何もないのです」とは深井慎五シェフ。
夜な夜な通い詰めても、違った楽しみが待つ万華鏡のような店。目黒の路地裏、まさに住宅街の一角に『ルベロ』は潜む。