「とてつもなくしんどい…」どんな役にもなりきる俳優・中井貴一が癒される相手とは

長年、映画界で活躍し続け、多様な人物を演じ分けてきた俳優・中井貴一さん。

彼に「生きているうちにやっておきたいこと」を聞くと、「馬との暮らし」という答えが返ってきた。

第一線に立ち続ける名優の気構えや、知られざる苦労も語ってくれた。



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俳優・中井貴一が演じることで獲得した自由とは?


馬と暮らしたい。そう願う理由を訊ねると、中井さんは目を細めて次のように語った。

「長野県の蓼科に親父が建てた山荘がありまして、子どもの時分にそこへ行くと、日がな一日近くの牧場で馬を眺めていました。好きだったんです、馬が。

特に『ツキカゲ』という一頭と飼い主の方との関係が印象的でした。感情が備わっている動物と密接に付き合うには意思の疎通が必要。両者の間にはそれが成立していると感じられたのです。

相手の心を思い量ることと、それによる喜びを、馬は人に示唆してくれる。だから、僕は馬に惹かれるし、馬と共存したいという夢を見るのでしょう」


演技は突き詰められない。だから飽きることがない。飽きてみたいものです


演技はコミュニケーション。俳優は芝居を通じて役柄の想いを観客に届ける。

デビューから41年もの間、その作業に取り組み続けてきた中井さんらしい発言にも聞こえる。そう伝えると、彼は、今度はこんな話をしてくれた。

「僕らの仕事は歌舞伎のような伝承芸能ではありません。お客さまが面白がってくださることが何より大事。

辛いことや悲しいことがあっても、作品に触れて過ごす時間は、それをすっかり忘れていただく。そのために俳優は努力するのです。

ただし、一筋縄ではいきません。作品には作為があるものですが、それを感じさせず、さも生理から反応しているかのごとく演技を繰り出せるかどうか、力が試される。

僕の場合は、まず脚本を読んで感受し、その内容を自分の心と体に完璧に浸透させます。これが大変。とてつもなくしんどい。

でも、丁寧に段階を踏んでプロセスを構築できれば、極めて自然にその役柄に入り込める。つまりは自由を獲得できる。そのための苦労を厭わないかどうか。

それが俳優を続けるかどうかのバロメーターになっている気がします」

自分の立場を理解し、どう振舞うのか。それを見極められる役者でいたい


「80歳や85歳でも現役をまっとうする方がいるから、まだ僕は映画やドラマの中で子どもになれるし、年老いた親子の関係も表現できる。

言い換えれば、僕ら世代が残ることでこの先の作品の幅が広がる。率直に言って、作品を残すこと以外に僕らの存在価値などないんです。

自分をよく見せるのではなく、自分の立場をわきまえて作品の仕上がりを優先させる。それが、お客さまの『面白かった』に繋がると思うのです」

俳優・中井貴一の視野は広い。

代表作が多いのはだからなのかもしれないと、妙に合点がいった。

■プロフィール
中井貴一 1961年生まれ。東京都出身。81年、映画『連合艦隊』でデビュー。最新作は佐々木蔵之介さんとバディを組んだコメディ映画『嘘八百 なにわ夢の陣』(2023年1月6日公開)。

■衣装
ジャケット 160,600円〈エルネスト〉、シャツ 25,300円〈ギ ローバー〉、ネクタイ 16,500円〈ステファノ カウ/すべてバインド ピーアール TEL:03-6416-0441〉、その他スタイリスト私物


▶このほか:華やかな芸能一家に生まれ育ち、演技力で魅了し続ける髙嶋政伸の原動力とは



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「生きている限り俳優ですか?」東カレに語ってくれた、その答えとは…?

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