「おい自分、どこまでいけんの?という自問自答を繰り返す」
あれから約2年半が経ち、35歳になった松下洸平さん。
スーツをまとい軽やかにカメラの前に立った姿からは、構えた様子は見受けられず、どこか余裕の表情すら感じられた。
「年齢の数字に敏感になってしまうのはあまりよくないな、と思いつつ、“年相応”という言葉について、いつも考えている気がします。
もちろん、年齢とともに経験や知識を積んで、それなりの振る舞いができる、年相応の人間でいることはとても大切なことだと思いますし、自分自身を『大人の男』と自覚すべきだという気持ちはあります。
でも一方で、そこに縛られすぎて、好奇心や気持ちを抑えてしまうのもよくないと思っていて。
遊び心や、子ども心みたいなものは絶対に忘れたくないのですが、とはいえ35歳ですから(笑)、恥ずかしくない大人でもありたい。いつもそのバランスを探しているのかもしれません」
気持ちを伝えるためによりよい言葉を探しながら、ゆっくりと、とても丁寧に答えてくれる姿勢が印象的だ。会うたびにそう感じる気がする。
この日も、自身のこれまでを振り返りながら、仕事の“分岐点”について静かに、そして実直に語ってくれた。
「自分の人生を大きく変える気がする。そんな直感を自分勝手に信じてみる」
「僕には、これまで分岐点といえるものがいくつかありました。
例えば、大きな作品に呼んでいただいたことで自分の人生が変わったり、すごく難しい作品と向き合うことで芝居に対する考え方が広がったり。また、そこには必ず人との出会いがあったりもしました。
自分自身のターニングポイントに、いかに気付くことができるかが、大切なことだと思っています」
のちに振り返って、それが分岐点だったと感じることもあるが、時々、その最中に、もしくは直前に直感が働くこともあるという。
「この作品に挑戦することでとか、この人と出会ったことで自分の人生の何かが変わるような気がする、という直感的なものは、僕だけではなく誰しもが持っていると思います。
僕は、その直感を“自分勝手に”信じてみることが、意外と大事なような気がしていて。信じることによって、本当に大きく変われることもあると思うんです。
人間の性格は、そう簡単には変えられないとよく言われていますが、僕もそう思います。でも、新たな仕事や出会う人によって、自分の人生を変えることはできると思っているんですよね」