「たまには、こんな夜景デートもいいですね!」
だが、その魔力は認めている。
「夜景のパワーがすごいっていうのはわかるんです。
M-1で優勝して港区に住んでいた30歳の頃、六本木ヒルズに住んでいた知り合いの社長さんに呼ばれてね。カーテン開けて、すぐ間近に東京タワーが見えるってなんや!って。
やっぱり驚きましたし、そこにいた女子たちのテンションがぐわっと上がるのも肌で実感しましたもん。実際、今日の彼女も目を輝かせてたもんなぁ」
「デートで成功する秘訣は、背伸びはしてもいいけどジャンプはしないこと。怪我しますよ」
井上さんといえば、ナルシストキャラだ。であれば当然、デートもその方向で徹底しているのでは?そう尋ねると、苦笑いを浮かべた。
「見た目と行動が自然なセットになって、初めて心って動くと思うんです。花束や夜景は木村拓哉さんなら絵になるけど、俺じゃどう考えても気味が悪い(笑)。そこをはき違えないようにしないと。
僕は恋愛で一番大事なことは、背伸びをしないことだと思うんです。もちろん、一生背伸びできるやつはしたらええ。でもそうじゃないなら、無理したらあかん。
僕ね、恋愛ってのは唯一、ルールがない戦いだと思うんです。
統一ルールがない以上、全員に当てはまることもない。でもだからこそ、自分だけの戦い方で臨んだらいい。マニュアルやテクニックはあくまでも参考程度に、ね。
でも今日は、完全にファンタジーの世界を経験させてもらえて、すごく新鮮やったなぁ。楽しい時間をありがとうございました!」
そう満面の笑みで手を振り、現場を後にした。
最後のセリフはそのまま新近効果となり、幸せな余韻をいつまでも残してくれた。
井上さんがモテるのは、当然だ。