「モテそう」なのに、実は全然モテない―。
こんな男性、あなたの周りにもいないだろうか?
顔立ちはイケメンで、背も高くて、大企業勤務。スペックはそろっているのに、なぜか女子に人気がない…。
広告代理店勤務の30歳・哲也もまさにそんなタイプ。
マッチングアプリでようやくイイ雰囲気になっていた女性に、「キスを拒まれる」という悲劇で男のプライドはズタズタ。
しかしこれには理由があるのだ。これはアラサー男女2人の、キスまでの距離を描いたストーリー。
三度目のデートで起きた悲劇
「じゃあ、気をつけて…」
東京駅のタクシー乗り場で、哲也はぎこちなく笑った。
「はい。哲也さん、ごちそうさまでした。ではまた」
タクシーに乗り込む彼女を見送り、哲也はうなだれた。
― 「また」って言ってくれたけど、もう会うことはないんだろうな…。
栞里とは先月マッチングアプリで出会い、今日は三度目のデート。デート中は終始、いい雰囲気だったと思う。彼女はずっと笑っていたうえ、こんなことまで言ったのだ。
「哲也さんと付き合えたら、私、本当に幸せだろうなぁ」
だが順調に進んでいたデートが突如ぎこちないものに一変したのは、食事後のこと。帰るのが惜しくて、2人で皇居前の通りをゆっくり歩いているときに悲劇は起きた。
「今日は楽しかったね」
はにかみながら言う彼女が愛おしくなり、哲也は思わず、白くて細い栞里の手を握った。
すると彼女もぎゅっと握り返してくれる。そしてしばらく近距離で見つめ合ったあと、唇を軽く合わせた。
そしてもう一度キスをしようとしたそのとき――。
栞里が、プイッと顔を背けたのだ。そして申し訳なさそうにうつむく。
「…ごめんなさい。帰りましょう」