2021.12.08
「『DePREMIUM』が入り口となり、結果としてお客様にレストランへと足を運んでもらうことが理想」(奥野シェフ)
――『DePREMIUM』には、これまで「出前やデリバリーなどやるはずがない」と思われてきたお店も参入されていることに驚きました。デリバリーサービスの定着やお客様のニーズの多様化によって、飲食店にも変化が求められているのでしょうか?
稲本:参加店すべてが必ずしも初めてのデリバリーというわけではありません。これまでそれぞれの飲食店が様々なチャレンジと試行錯誤をされてきています。今回はそれらを『DePREMIUM』というひとつのサービスのもと新たに始めたということです。
奥野:この1年半、僕らも高まるニーズに応えようと、自らケータリングやデリバリーにトライしたり、既存のデリバリーサービスに依頼をして、休業中の店舗をデリバリー専門の拠点に変えてみたりと、新たなサービスの模索に取り組んできました。
そんな中で稲本さんにお声かけいただき『DePREMIUM』に参加を決めたのは、その仕組み自体がとても魅力的で、僕ら飲食店側にとっても導入しやすい内容だったからです。
奥野:例えば、しっかりとした審査を通って選ばれた方が配達してくださること、料理をベストに近い状態でお客様に届けてくれる安心感。預ける料理へのケアの意識や責任感など、配達全般のクオリティはとても重要でした。また、導入コスト面でのハードルの低さも魅力です。
飲食の実店舗では、席数に限りがあるため、1日の客数、対応数に限界がありますが、デリバリーという概念は、この限界を取り払って販売数を大きく飛躍させてくれるものです。
特に東京などの大都市圏では「デリバリーしてでも食べたい」という傾向、規模は大きく、だからこそデリバリー専門店の運営も視野に入れた事業の再構築も成り立ちうるんです。
デリバリーはすでにコロナ禍の急場しのぎではなく、文字通り「ニューノーマル」となっています。
「おうちにデリバリーしてみよう」から入って、「美味しかったから実店舗に行ってみよう」につながっていくというのも、これからの形ではないでしょうか。
デリバリーニーズによる新しい市場が誕生し、規模が拡大しつつある絶好のタイミングで『DePREMIUM』に参加できること、マーケット感をいち早く体験できることは本当にありがたく、感謝しています。
――酒井さんにとってデリバリーや『DePREMIUM』とはどのようなものでしょうか?
酒井:僕がいる和食の世界は、元来保守的な風潮が強いジャンルだと思います。ECやデリバリーによる料理の提供というサービスに踏み出すには、抵抗を感じる方も多いと思います。
かくいう僕自身、目の前にいらっしゃるお客様に全力を尽くすことがおろそかにならないかと、最初から100%乗り気というわけではありませんでした。
『創和堂』をオープンさせたのは2020年の7月でしたが、コロナが猛威を振るうなかでの開店にもかかわらず、おかげさまで営業できた日はほぼ満席が続いております。
酒井:でも、これまでお店でしか飲めなかったような貴重なお酒も、今はインターネットで簡単に購入できます。「料理はデリバリー、好きなお酒をネットで購入して、自宅で合わせて楽しむ」というスタイルが一般的となりました。
しかもこの短期間に、以前はまさかデリバリーできるとは思ってもみなかった料理やお店が、テイクアウトやデリバリーへの対応を開始しました。お客様の選択肢は着実に増えており、私もその中から選ばれる料理を提供する必要があると考えました。
『DePREMIUM』への参画にお声かけいただいた時、率直に言うと、他にどんなお店が参加するのかは大変気になりました。自分の料理をお客様へ届ける、その大切な役割をどんなお店が任せるのだろうと。
でも名だたるラインナップを見て、飲食店と『DePREMIUM』の信頼関係が見て取れました。
さすが稲本さんがディレクションし、出前館が力を入れる新ビジネスだと恐れ入ったのが本音です。そして、このラインナップに名を連ねられるのが本当に嬉しいです。
この1~2年、苦しい環境や新たなサービスへの対応などにめまぐるしく追われましたが、私の頭も多少柔らかくなったと思います(笑)
――和食をデリバリーにするために、メニュー開発に変化はありましたか?
酒井:そうですね、対面のお客様に職人がライブで調理するのに対し、デリバリーメニューはどうしても、手元に届くまでにタイムラグが発生します。届いて食卓に並ぶその時が、食べるにもベストなタイミングになることを加味した商品開発は、僕らのスキルアップにつながっています。
和食には仕出しの技や歴史があります。『創和堂』には京都の仕出しの名店に10年いた料理人もおりますので、今は彼のノウハウを活かしながら、スタッフ一丸となって新商品開発に力を入れています。
――鳥羽さんはご自信の事業と『DePREMIUM』をどのように結びつけられていますか。
鳥羽:『DePREMIUM』に参画している『Hotel's』は、10月にオープンしたばかりのレストランで、「ネクスト・スタンダード」をコンセプトとした新業態です。
レストランそのものが複数の事業を内包する独立した存在を目指していて、具体的には、朝、昼、晩の3部営業で、最初からECとテイクアウト、そしてデリバリーをスキームに組み込んでいるレストランになります。
店舗にシェフがいないときも常に機能し、マネタイズポイントが特定の1点ではなく面になるようなお店を目指しています。
稲本さんからお話をいただいたのは、この『Hotel's』のコンセプト構築をしている真っ最中でした。そして『DePREMIUM』のコンセプトが『Hotel's』とがっちり一致してしまったんです(笑)
僕は以前から「予約が取れない店から、予約が取れる店へ」のシフトチェンジが必要だと言ってきました。
予約が取れないという付加価値はブランディングに役立つ一方、SNSや動画配信サイトで僕と僕の料理を知ってくださった方が、せっかく「一度食べてみたいな」と思っても、結局予約が取れず食べられない…そんな問題をこれまでにも見てきたからです。
「行きたいときに行ける」「感じたいときに感じられる」レストランでありたい。
この僕の想いに、『DePREMIUM』の「レストランが持つ世界観を崩さずに、お客様へ料理を届けたい」、「食べたいときに食べられる」というコンセプトがぴったりはまったんです。
――お客様だけでなく、飲食店側が求めるデリバリーを的確に掴むことも大切ということですね。
鳥羽:デリバリーサービスの提供者がその信頼を勝ち得る必要はありますね。今回の参画に際しても、飲食業を理解していない人からの提案だったら、お話は受けていません。多くの飲食店とともに歩んできた、実際に色々食べてきた稲本さんだから説得力があるし、相互に信頼が築けるお店をキュレーションしていけるんだと思います。
今後、デリバリーが店で提供するものに遜色なく、ハイクオリティな料理とサービスを提供できるように、そんなデリバリーがハイエンドなレストランでもスタンダードとなるように頑張りたいです。
その先駆者として、『DePREMIUM』は多くのシェフたちの可能性を広げるプラットフォームになると期待しています。この新しい業態で生み出されるビジネスが、お店や働く人、飲食業界の環境全般をよくする循環に組み込まれていくことも楽しみです。
稲本:今回『DePREMIUM』に参画してくださった最初の17店舗は、すべての店がお客様の特別になれるお店ばかりです。だから配送、包材、人材どれをとっても、お店とお客様双方の満足を考慮して選定しています。
例えば包材は、新品のブランド品を開ける時のようなワクワク感などをイメージして決めました。デリバリーなんだけど、レストランとお客様のリアルな出会いに限りなく近づける。
先ほど奥野さんも言ったように、「デリバリーきっかけでお店を知り、次に実際にお店に足を運ぶ」。『DePREMIUM』がその循環の入口になれたら一番嬉しいことだと思います。
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