2021.11.03
ニューノーマルな男と女 Vol.22020年3月
「そうなんだ…。コンサートやイベントも中止になっているから、仕方ないよね」
友人の真紀は、弁護士の恋人と春に挙式を予定していた。
そんな彼女から結婚式が中止されるという連絡が入ったのは、梢と正尚がまさに都内各所のウエディングフェア巡りをし始めた矢先のことだった。
「楽しみにしてくれていたのに、ごめんね」
気丈にふるまってはいるものの、電話口の彼女の声から、やるせなさがはっきりと伝わってくる。
梢たちはまだ日取りも決まっていない状態のため、影響を被っているわけではないが、他人事ではない。
「中止ということは、式場をもう一度予約するの?」
「ううん。いつ終息するかわからないから、キャンセルよ。半年以上はこの状態が続きそうだから…」
「そうなんだ…」
相槌をうちながらも、梢の心は不安でいっぱいだった。
― この状況が半年以上も続くって冗談でしょ?私のプランでは、秋口を予定しているのに。
梢は正直、楽観視していた。嫌な知らせは、できるだけ耳にしないようにしていたからかもしれない。
冷静に見ると、結婚式場のブライダルフェアも中止が多くなってきている。パンデミックの影響は、すぐそこまでやってきているのだ。
帰宅後、一緒に暮らしている正尚にそのことを相談すると、慎重な彼らしい答えが返ってきた。
「実は僕も挙式のことは、一旦様子を見た方がいいと思っていたよ。とりあえず今は籍を入れて、指輪を買うだけにとどめておこうか」
「ありがとう。たくさんの人、呼びたいからね」
「梢が望む式が出来なきゃ、僕も悲しいからさ」
正尚の頼もしい存在感と、自分の気持ちを十分に汲んでくれる優しさにホッとする。
翌日、二人は銀座のカルティエに赴き、そろいのマリッジリングを見つくろった。
― この人が、結婚相手でよかった…。
左手の薬指にきらめく、プラチナのバレリーナを眺めながら、隣で微笑む正尚の肩に身体を預ける。
そもそも、梢が彼を選んだのは、憧れの結婚式を実現させてくれそうな人だったから。
優しくて、梢のことを最優先に想ってくれる真面目な人。どんなわがままを言っても受け入れてくれる懐の深さがあった。
だからこそ、安心して憧れの結婚式に夢を馳せることができる。
梢の笑顔は、彼の喜び―
梢はそう思っていたし、その考えは間違いではなかった。しかし…。
2021年2月
「はぁ…。いつまでこの生活が続くんだろう…」
年末から再び状況は深刻になり、挙式の見通しもつかぬまま、梢はついに30歳を迎えてしまった。
籍は入れたが、交際中から同棲はしていたため、独身時代と何ら変わらない生活。式ではボディラインが出るデザインのドレスを着たいため、妊活もしていない。
ゆえに、結婚の実感がまったく湧いていないのだ。
― やっぱり、式挙げていないからよね…。
リモート結婚式やフォトウエディングを考えたこともあったが、一生に一度の結婚式。結局、妥協はしたくないと、やはり様子を見ることにした。
「なぜ、私の結婚式がこんなことに…」
久々に買い物に出た街で、ウエディングドレスサロンのショーウインドウを眺めながら、梢はため息をつく。
ガラスに反射しているのは、自粛疲れでやつれた自分の姿だ。
― こんな生活が永遠に続いて、ドレスが似合わない年齢になったらどうしよう…。
そんな不安が胸によぎった、そのとき。
下腹部にずしんと猛烈な痛みが襲った。それとともに頭がくらくらして、周囲がぐるぐる回りだす。
梢の目の前が、突然真っ暗になるのだった―
それだけ?
夢のような披露宴とタヒチへのハネムーンを叶えてくれそうな人だからと結婚したのに、半年もしないうちに離婚した人を知っている🤣
子宮筋腫が大きくなってきているので切除する手術をするかどうかの話かと思ったけど。すぐにでも子供のことを考えようって…
1人産んたら子宮全摘する方向?な訳ないよね。パンデミックで夢の結婚式を断念せざるを得なかった内容は分かるけど。
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