男と女の怪談~25歳以下閲覧禁止~ Vol.43

コロナ禍の結婚式、感染対策を意識し過ぎて…!?新郎が幸せの絶頂で知ってしまった、衝撃の裏事情


夏・第十ニ夜「奥ゆかしい女」


夏の終わりのよく晴れた土曜日。今日は僕と多恵の結婚式だ。

窓の外には、都心とは思えないくらい緑豊かなプール付きの中庭が広がっていて、スタッフが、色とりどりのバルーンと花で装飾をしてくれている。

― ここで結婚式ができるなんて、ラッキーだったなあ。

僕は、安堵のため息を漏らす。付き合って1年弱でトントン拍子に結婚することになったものの、式を挙げようとしたらば世の中は未曽有の事態。

様子を見よう、と言っていたら半年以上経ってしまった。

これ以上待っても、いつ結婚式ができるのか予想が立たない。そこで速やかに、人数を相当絞ったささやかなパーティーをすることにしたのだ。

僕は歯科医で、今は勤務医だがゆくゆくは父親のクリニックを継ぐことになっていて、礼を尽くさねばならない目上の先生方が幾人もいる。

幸いにも式場はフレキシブルに対応してくれて、親族をいれて30名程度でも、庭園併設で風通しのいいバンケットルームを借りることができた。

僕は、気恥ずかしくなるほど白くキラキラした控室から、青空を眺める。

美しい日だ。完璧な1日になるだろう。

「ご新婦さまのお仕度が整いました」

振り返ると、純白のドレスに身を包んだ多恵が、介添えスタッフに手を引かれて、ほほ笑んでいた。

「多恵、とっても綺麗だよ。お義母さんにも見せてあげたかったな」

僕は歩み寄ると、彼女の肩にそっと触れた。再婚後マレーシアに移住していて、情勢に阻まれ今日ここに来ることができなかった多恵の母親のことを想うと胸が痛む。

「仕方ないわ、持病があって万が一のことがあったら大変だし…。とても残念がっていたからビデオや写真、たくさん撮って送ってあげなくちゃ」

多恵は父親を早くに亡くし、母親も数年前に新しい幸せを掴んだ。一人っ子の多恵を僕が幸せにしてあげることが、義両親への恩返しになるはずだ。

僕は華奢な多恵の腕をとる。

「さあ、行こうか!奥さま」

「はい、亮太さん」

僕と多恵はこの時確かに、幸せの絶頂にいた。

― 1時間後、ある疑問が、僕の中で生まれるまでは。

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