2013.11.21
サラファン
心ほどける、ボルシチ“つき”ランチ
「ボルシチです。中央のサワークリームを溶いてお召し上がりください。パンを浸してお召し上がりになると、美味しいですよ」
「サラファン」の週替わりランチには、ボルシチがつく。店主は最初に運んでくるボルシチを、こう言って勧めてくれる。
なんとも色合いが美しい。透き通った茜色の液体が目に優しい。飲めば穏やかな滋味が、ゆっくりと広がっていく。一口だけで、喉が開き、心がほぐれ、厳しい外気にさらされた体が上気していく。様々なボルシチをいただいたが、この温かみのある味わいと色合いは、サラファンだけである。秘訣は作り方にあった。
牛と鶏と野菜でとったスープに、ビーツを加えるのだが、ビーツは色が壊れやすいため、他の野菜とともにピュレにして加えているのだという。それゆえの鮮やかな色合いであり、キャベツとジャガイモの具だけでなく、様々な野菜の味わいが溶け込んでいるからこそ、優しい気分を呼ぶのである。
この料理法は、満州から引き上げて店を開いた、初代の岡本エカチェリーナさんから譲られたものだという。揺るぎなき民族の知恵が生んだ味である。
ボルシチで心を座らせ、料理を食べる。細かな衣で香ばしく焼き上げられた鶏の肉汁を楽しみ、ターメリックライスを食べる。1000円ながら、なんと豊かな時間だろう。冬が近づくと、サラファンに向かう。創業来約半世紀、御茶ノ水の片隅で人々の心を温め続けてきた、真心を味わいに行く。
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