好きな人には好かれない。
なのに全く興味のない人に好かれてしまう。
そんな悩みを抱える女性は少なくない。
丸の内にある外資コンサルティング会社でバックオフィスとして働く、倉本麻美(くらもとあさみ)もそのうちの1人。
見た目は清楚な女子アナ系で、後輩からも慕われる麻美。
だが彼女にも、ある悩みがあって…。
―えっ……。秒で返信来たんだけど…。
残業帰りに、近所のスーパーで夕食の買い出しをしていると、今年買ったばかりの新作ブランドの鞄の中から、スマホがブルっと振動した。
『麻美ちゃん。お仕事お疲れさま!(^^)!週初めから残業なんて大変だねっ。俺は今日ベトナムとの取引が決まって〇△×■………』
この間マッチングアプリで知り合った、商社マンからだった。既読にならないように、そっとメッセージを長押しする。
内容はいわゆる、「俺は今日~」で始まる“俺通信”。
最初は、自分のことをよくしゃべる人だなぁと呑気に構えていたが、日が経つにつれて「もしかして、かまってちゃん?」と疑い始めた。
―私って、いつも好きな人には好かれない…。興味のない人ばかり引き寄せてしまう運命なんだわ……。
実は麻美には、密かに思いを寄せている人がいる。
会社の同じチームの先輩で、流川という男だ。
流川は35歳。麻美の8つ年上だが、学生時代からずっとバスケットボールを続けているらしく、背が高い上に体は引き締まっている。それに顔は麻美好みの、切れ長の二重が特徴的なイケメンだ。
だがこの思いは、4年間ずっと胸に隠したまま。
というのも彼は無口な男として有名で、麻美は新卒から丸4年同じ部署であるというのに、プライベートな話をしたことがほとんどない。
またイケメンで仕事も抜群にデキるため、女子社員の間ではファンが多く、競争率も高いのだ。
だがその流川が今日、珍しく麻美に話しかけてくるという事件が起きた。