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  • 「今日のあなたが、1番好き」高嶺の花からその一言を引き出した、男の秘策とは

    東京で、目指していたものはだいたい手に入れつつあった。

    打ち込めるダイナミックな仕事、それなりの店に行ける余裕、居心地のいい部屋…。

    IT企業勤務の陸人が、そろそろ欲しいと思っていたのは、本当に心を通わせることができる「たったひとりの人」。

    しかし、ここで予想だにしなかった壁にぶち当たる。

    これは、彼が「たったひとりの人」を手に入れるまでの軌跡を描いた1年前の春のストーリーである。


    ―先日はありがとうございました。しばらく仕事が忙しくなるので、時間ができたら連絡します。

    月曜日。ようやく返ってきたLINEのメッセージを、陸人は何度も読み返した。相手は土曜日に3回目のデートをした27歳の女の子。

    ―これって、婉曲に断られてる、よな?

    昼食後のコーヒーを片手に、オフィスに戻るようなふりをして、陸人は少しだけ遠回りをしてそぞろ歩く。

    新しくできたビルの路面にひろがる大きなウィンドウに映る自分の姿が目に入る。

    陸人もここ丸の内で戦うものとして、ぱりっとしたスーツで決めている。身だしなみと清潔感には人一倍気を配っているし、その姿は自分でいうのもなんだけど、さほど悪くないと思う。

    ―なんでダメだったんだろう…。

    先月33歳になった陸人は、本気で付き合える人を探している。

    30代になり仕事も面白くなってきて、好きなところに住んで、ちょっとしたお店に週末に行くくらいの余裕ができた。そんな時、今、隣に心を許せる女の人がいたら素敵だろうなと自然に思うようになった。

    まずは1回目、会社帰りのデートは上手くいく。

    しかし、2回目、3回目の休日デートになると、今日のように相手がすっと引いてしまうのだ。

    なんせ、ちょっとイイ感じの女の子にフラれるのは、この半年で3回目。

    仕事柄、だいたいのマナーは頭に入っているし、情報は豊富だからお店やエスコートがそうおかしいとも思えない。

    陸人は、あまり考えないようにしていたある事実を、ついに胸の中で反芻した。

    ―俺、もしかして、私服がまずいのか…!?

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