オトナな男 Vol.12

オトナな男 番外編:仕事も男も捨て、シンガポールに旅立った30歳女に待ち受けていた運命

女には少なからず人生に一度、“大人の男”に恋する瞬間がある。

特に20代前半、社会人になりたての頃、先輩や上司に恋焦がれ、社内恋愛にハマる女性は多い。

だが場合によっては、その先にはとんでもない闇が待っている場合も…なくはないのだ。

今回は、「オトナな男」のスピンオフ。彼氏が自分の後輩と浮気していた梨江子の、会社を辞めてその後歩んだ人生とは?


4年前、梨江子が社会人3年目を迎えたとき、圭太が新入社員として入社してきた。

「ねぇ梨江子知ってる?」

「何が?」

「今年の新卒、すごいかっこいい子入ってきたんだよ」

圭太が入社した当初は社内が少しざわついたが、当時結婚を考えていた彼氏がいた梨江子にとっては、まるで興味のない話だった。

梨江子は、取引先の担当者・篠田巧と付き合っていた。

しかし恋愛とはなかなかうまくいかない。

2人がそろそろ結婚に踏み切ろうとしていたタイミングで、巧のシンガポール転勤が決まった。ベンチャー企業で新規事業を立ち上げ、海外進出に向けて精を出していた巧にとっては、夢にまで見た転勤だった。

梨江子はそんな巧を一番近くで見ていたので、離れてしまう寂しい気持ちは抱えながらも、シンガポール行きを心から喜んだ。

「ついてきてほしい」という巧の本心を察していた梨江子であったが、ついに巧の口からは発せられることはないまま、旅立ちの日を迎えてしまった。

最初のうちはこまめにメッセージやスカイプで連絡を取り合っていた。憧れの場所で活躍する巧の話は聞いていて飽きることがなく、「離れていても大丈夫」という思いは強くなっていった。

しかしやはり巧の仕事は忙しく、連絡の頻度は徐々に減っていき、それに比例するかのように2人の心の距離も離れていってしまった。

別れを切り出したのは、梨江子の方だ。

それから3年間、梨江子は必死に仕事をした。徐々に薄れていく巧への思いにも気がつかないほど無我夢中だった。そして気づけば、マネージャーに昇格。誰もが羨むキャリアを手に入れていた。

しかし梨江子は、モヤモヤした気持ちを抱えたままだった。仕事をしているときは忘れられるが、寝る前やお風呂に入っている時、本当にふとした瞬間に巧の存在が頭の片隅を過ぎる。

そんな巧のことを思い出す日々は、圭太と恋に落ちて大きく変わったのだった。

「梨江子さん、食事に行ってくれませんか?聞いてほしい話があるんです」

隣の部署の圭太との関わりは多少はあったものの、2人だけで食事に行くことは初めてで戸惑っていたが、圭太の真剣な眼差しに後を押された。

梨江子と圭太は恵比寿の『アポンテ』で食事をしていた。お店は圭太のセッティングだ。

巧と付き合っていた頃は、こういうレストランによく連れて来てもらったなと梨江子の中に懐かしい気持ちが湧いてくる。

顔も背丈も全然似ていないのに、纏っている雰囲気が似ているからか、なぜか圭太といるときは、巧のことを思い出すことが多くなっていた。

「圭太くん、聞いてほしい話って何かな?」

巧への気持ちを心に閉じ込めながら、圭太との会話を進める。

「あ、いや、聞いてほしい話というか……」

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