「気がつけば、男女の仲に...」男の巧妙な手口に洗脳され、家族にまで見捨てられた32歳女の事情

ある日店に投資家の彼がやってきた


今から4年前、春香は中央区にある実家のフルーツ店で働いていた。小さなお店だったが、上質な国産フルーツを中心に扱っていた。

「ある日、お店に見舞用の果物を購入したいという、30歳半ばくらいの男性がやってきました。彼との出会いが私の運命を変えていきました。大型病院の近くという立地もあって、そのようなお客は珍しくなかったです。その彼はカフスを付けた上質なシャツを着こなし、涼し気な目元に整った顔立ちをしていました」

春香が予算や相手のことをヒアリングすると、見舞う相手から果物を指定された訳ではないことが分かった。

「フレッシュフルーツは見た目や香りは良いのですが、皮を剥くなどの手間や日持ちの問題もあるので、お見舞い品であれば少しずつ食べる事ができるドライフルーツや食べやすいゼリーなどを提案しました」

数時間後、その男性はまたお店に現れ「とても喜んでもらえました」と御礼を言いに来たという。それ以来、彼は贈答品の購入で何度も来店するようになり、店内で世間話をする間柄になっていた。名を宮田といった。

送られてきた封筒に入っていたものとは


「彼は若いのに、投資家で経営相談や研修講師なども引き受けているようだと父から聞きました。クールで素敵な人だなとは思っていましたが、育ちから私とは違う感じで、どちらかというと“憧れの彼”という存在でした」

ある日、春香が近所への配達を終えて店に戻ると、店内に宮田がいた。そして父から「おい、ちょうど昼時だし宮田くんとご飯でも行っておいで」と突然言われ、お互い驚いて顔を見合わせたが、父から半ば強引に外に出されてしまったという。

春香は時間もなかったので馴染の定食屋を訪れた。すると彼は明らかに嫌そうな顔をした。「失敗したかな?」と思っていたが、食べ出すと彼は「なかなか美味しいじゃないか」と言う。しかし、宮田は続けてこう言ったそう。

「“いつもこんな所でご飯を食べているの?おたくのお店は良い商品を扱っているのに、それが使われているような店には行かないのか?”って言うんです。美味しいと言いつつも、その店内で“こんな所”と言う彼には、嫌な印象を抱きました。“そのような店にはあまり行かないです。うちはそんなに余裕はないですから”と答えました」

彼は、「無知な人間が損をし、知識を持つ人間がいつの時代も得をするんだよ」と言い、鼻で笑いながら次のように言ったそう。

「君は前者で終わりたいのか?」
「俺の言う通りに動けば、成功者になれる」

翌日、宮田から分厚い封筒が春香の手元に届いた。翌年に開かれる食品・飲料の大型展示会の資料と、中小企業庁が発行している経営支援や補助金の資料が入っていた。

「こんな大きな展示会、出展料も高いし縁のない世界と思っていたけど、申請すれば専門家から支援を受けたり、出店する為の補助金まで貰えるんだ、と驚きました」

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