7コ下の恋人 Vol.7

「今夜はまだ、帰りたくないのに…」。目の前の女を置き去りにし、年下男が向かった先とは

店を出て、何となくスマホを覗く。ロック画面には一通のLINEの通知。「晴人かな?」と期待して開くと、飯田さんだった。

「今、大学で同期だった東山と飲んでるんだけど、来ない?」

22時前。でも、まだ帰りたくない。

東山先輩はサークルが同じだったので、私もよく覚えている。陽気で面倒見のいい人で、可愛がってもらっていた。

私は急いでタクシーを拾うと、車中で「行きます」と返信をして、彼らの元へと向かった。

晴人と元カノ


「晴人…会いたい…。今すぐ来て。お願い…一人でいたくないの」

濱野舞は、泣きながらそう電話して来た。彼女とはここ1年ほどずっと会っていなかったのに、バーベキューでの再会をきっかけに何かと頼られている。

「どうした?落ち着いて。今鉄平か遊一か、誰かに連絡するから…」

悪いとは思いつつ、共通の友人の名前を出す。今日だけは…今日だけは泉さんの元を離れたくない。

この後もう一度彼女に、告白をしようと考えていたから。

「やだ、言わないで。晴人がいい…晴人まで、私を見捨てるの…?」

ー“私を見捨てるの…?”

この言葉が、胸の奥底にしまい込んでいた記憶を呼び覚ました。僕は、濱野舞を放っておけないのだ。

昔、彼女と別れた原因は、忙しさによるすれ違いだった。でもそれは、実際には僕が彼女を見捨てたようなもの。

舞に告白されて付き合い始めた僕は、恋愛よりも起業に夢中になっていた。学生のうちに何とか芽を出したいと、毎日そのことばかりだった。

その時の僕は、仕事というよりも面白いゲームを見つけた感覚で、舞のことはそっちのけで没頭してしまっていたのだ。

彼女は僕と付き合ううちに、段々と不安定になっていき、次第に我儘を言うようになっていた。

「ねぇ、今すぐ来て」
「明日一日空けておいて!パーッとディズニーに行こう」

それでも初めは好きだからこそ彼女を優先していたのだが、次第に面倒臭く感じるようになった。

すると僕の気持ちが離れるのを感じ取った彼女は、さらに不安定になり、ますます我儘が酷くなっていく。

そしてある日、彼女が言った。

「お願い、どうしても今日だけ…。会いたいの。今すぐ会いたい」

「ごめん、今日は無理だわ。やらなきゃいけないことがあって…」

その頃の僕には、正直彼女からの電話が苦痛でしかなかった。電話を取りながらも、「またいつものやつか…」と、イラつきながら話す。

「何で…何で会ってくれないの?そんな起業ごっこの何が楽しいの?私とどっちが大事なの!?」

「は?何だよ、ごっこって。こっちは真剣にやってるのに…。もういい、切るわ」

プツリと一方的に切ってしまった通話は、その時の彼女をどれほど傷つけただろう。

その電話から数日後、意外にもあっさりと彼女が言った。

「やっぱり、私たち友達の方がいいみたい。ね、友達に戻ろう?」


そう言って差し出された右手を見て、内心ホッとした。

そして僕は、少し残念な顔を浮かべながら彼女の手を握って「そうだな、そうしよう」と答えたのだ。

自分で切り出さずに、卑怯にも彼女に決定打を言わせておいて。

それから半年後だった。彼女のお母さんが、僕らが別れた直後に亡......


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