美女失脚 Vol.2

後悔しても、もう遅い…。恋人候補にも挙がらなかった男が隠していた、衝撃の正体とは

負け犬の遠吠え


−まさか、隆一さんの婚約者って、この人なの!?

隆一の隣で、キラキラと輝く婚約指輪をつけて微笑む彼女は、お世辞にも美しいとは言えない女性だったのだ。

昭和のアイドル風の重い前髪。写真を撮る直前に塗り直したと思しき、真っ赤な口紅。肌も髪も、潤いがない。なんというか、全体的に野暮ったい。

今っぽくもないし、女性らしさも一切感じないのだ。

−隆一さんって、こういう人がタイプだったのね。地味な男と女でお似合いなんじゃない!

こんな女に負けたのかと思うと、はらわたが煮えくり返る思いだ。しかし、苛立っていた優里はその投稿から目をそらすことが出来なかった。

ゆっくりスクロールしていくと、優里の目に衝撃的なコメントが飛び込んでくる。

“頭が良くて、仕事も出来て、頼もしい彼女。僕にはもったいない、最高のパートナーです”

そこには、優里が言われても全く嬉しくない褒め言葉が並んでいたのだ。

頭が良い、仕事が出来る、頼もしい…。

−これじゃまるで、男を褒めてるみたいじゃない!

女という生き物は、ちょっと抜けてて、守ってあげたくなるような、要するに自分のような女がモテるのに。

きっと、女々しい隆一は男勝りな女性が好きだったのだろう。しかし、それにも関わらず、自分にもちょっかいを出してきたことが腹立たしい。

−ああ、気分悪い!ムカつく!

優里は、隆一を友達から削除してからFacebookを強制終了した。


そして、迎えた土曜日。

結局“Sato”の正体は分からないままだったが、当たり障りのない挨拶とパーティーへの参加表明をしっかりと送っていた優里は、赤坂のタワマンを訪れていた。

「優里ちゃん、今日はありがとう。僕のこと覚えてくれたんだね、嬉しいよ」

謎の人物“Sato”は、到着した優里を温かく迎える。

「え、ええ…、もちろん。こちらこそ、嬉しいわ」

適当に返答しながら手土産に持って来た『スイーツ&デリ/パレスホテル東京』のチーズケーキを手渡すが、優里は内心焦っていた。

−やばい。この人、顔見ても思い出せない…!

パーティーはすでに始まっているようで、広いリビングには男女が10人くらい集まっていた。

彼に連れられ、優里がリビングに足を踏み入れると、男性陣の動きが止まり、視線が一気に集中した。

彼らの熱い視線に一通り微笑み返しながら、優里はその場にいる女性陣のレベルをチェックする。

そこにいたのは、”清楚系コーデ”に身を包んだ、モテたくて仕方ないという女たちばかりだ。皆、白いブラウスにパステルカラーの膝丈スカートという量産型女子。顔まで全員同じに見えてくる。

−ふふ。今日は、私が主役みたいね。

優里は、女性陣から向けられた嫉妬の混じった冷ややかな視線にも、にっこりと笑顔を向ける。

すると、ひとりの男性がキッチンから顔を出し、優里にシャンパンを手渡した。

「どうぞ。こんなかわいい子連れてくるなんて、さすが涼介だな。取締役は違いますねえ」

−佐藤涼介っていうんだ…。と、取締役!?

優里が驚いていると、涼介が「やめろよ」と頭をかいた。

「こちら、瓜生康一郎(うりゅう こういちろう)。小学校からの同級生なんだ」

涼介に紹介された康一郎は、ペコリと頭を下げた。

聞けば、二人は、裕福な家の子息が通うことで有名な男子小学校の同級生らしい。

「おい、涼介。そろそろケーキ出せば?お前が作ったやつ」

康一郎の呼びかけに、涼介は「そうだな」と言ってキッチンへ消えていった。

ケーキを作るなんて、随分かわいらしい趣味をお持ちなのね、と思いながらその背中を見送る。

しかし、その背景には、とんでもない真実が隠されていたのだ。

この記事へのコメント

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No Name
記憶にない男のホームパーティーなんてよく行けるね。
2019/05/30 05:3299+返信5件
No Name
ワザと赤ワインはちょっとひどいのでは…
2019/05/30 05:4799+返信11件
No Name
この男の人たち裏がありそう
2019/05/30 05:5699+返信1件
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