リッチな経営者ばかりと付き合ってきた美女の恋が、いつもダメになる理由とは

紗枝が選ばれなかった理由


「彼の家をよく訪れるようになったら気付いちゃったんですよね…彼の、小さな嘘に」

紗枝はもともと、束縛をするような女じゃない。彼が「予定がある」と言えば、疑ったり詰め寄ったりしたことはなかった。しかし時々、彼の態度がおかしいのだ。

「“昨日の集まりどうだった〜?”とか、“どこのお店行ったの?”とかって何の気なしに聞いただけなのに、いきなり動揺し始めたりして。“普通の居酒屋だよ”とか“忘れた”とか言うんです。忘れるわけないだろって、昨日の話を…」

紗枝は別に詮索する気などなかった。細かいことを気にする性格ではない。しかしついに、決定的な証拠を見つけてしまったのだ。

「無理のある言い訳で私との約束を断った日があって。翌日、彼の仕事が終わるのを待って、一緒に彼の部屋に帰ったんです。そして、こっそり怪しい場所を探っていたら、案の定出てきちゃったんですよね…ベッド下から、ピアスが」

紗枝は静かに「これ誰の」と尋ねた。すると想像以上にあっさりと、「…元カノ」と白状したらしい。

「元カノの存在は知っていました。バンコク駐在に行く前だから…彼が28歳のときに付き合ってたらしいです。確か…4つ下のメガバンクOL。当時、まだ結婚を決めきれず別れたって話してたから」

知らぬ間に元カノと復縁していた拓也。その事実を知った紗枝は、なんだかんだで1年ほど付き合ったのにも関わらず、すぐさま彼と別れることを決めたという。

「問い詰めたり縋ったり…そういうのは苦手です。今までやったことないですし、楽しい恋愛しかしたくないんですよね。苦しいとか惨めなのとか絶対無理。私モテないわけじゃないから誘いなら他にいくらでもあるし、次に行ってやるって。そう思いました」

そして実際、紗枝はすぐに新しい彼氏ができた。新境地となる年下で、カメラマンらしい。

「今ラブラブなんで、拓也のこととかどうでもいいんですよ?だけど結婚の報告をされて、しかもその相手が元カノだっていうから…私、拓也のFacebookを遡ってみたんです。そしたらその元カノ、めちゃくちゃ“普通”で…私よりこの子を選ぶ!?って思ったら幻滅しました」

憤慨した様子で、紗枝は再びこう結論づけた。

「結局、日本のサラリーマンは手に負えない美女より手頃な女と結婚するんです。それを痛感した出来事でした。拓也も所詮、その程度の男だったんだわ」

本心から「自分は美人だから大丈夫」と思っている様子の紗枝。まるで学生のように「楽しい恋愛しかしたくない」と言い切った彼女だが、果たしてそれが本当に「楽しい恋愛」と言えるのだろうか。

もし彼女が、短いスパンの関係を繰り返すことに虚しさを感じるようになった時、今と同じことを言えるのだろうかと、思わず考えてしまうのだった。


▶NEXT:5月7日 火曜更新予定
「彼が愛しているのは私」セカンド女のダメ恋報告

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