噂の女 Vol.2

「口説けなかった女はいない」と豪語する男が連絡先すら教えてもらえない、謎の美女とは

口説けない女


橙色の柔らかい光に包まれるカウンターで、赤ワインを2杯注文し、僕たちは隣り合わせに座った。

背もたれのない黒い革張りの丸い椅子に座る彼女の姿は、背中のS字カーブが綺麗に浮かび上がり、なんとも色っぽい。

「で?何があったんですか?」

隼人に連絡を済ませ、紗季と少したわいもない会話をした後、僕は探るように尋ねた。

「別に、ただ…連れの人から逃げ出したかっただけよ。あの人少ししつこかったから。お化粧室に行くと言って逃げようとしたのに、あなたに呼び止められちゃって…」

僕の隣でワインをゆっくりと口に運ぶ彼女の姿は、完璧に美しい。この手の女は、自分がどんな姿勢でどんな風に動くのが一番魅力的か、熟知しているのだろう。


「でも、それなら僕を連れて行かなくても良かったんじゃないですか?」

「それは…、あなたが大きな声で名前を呼ぶから。それに、誰かがいたほうが、何かと便利でしょう?」

小悪魔っぽい笑みを浮かべる彼女を見ながら、どこかがっかりしている自分に驚いた。僕は無意識に、彼女が僕との接点を作りたかったのだと期待していたのだ。

「じゃあ、私、そろそろ帰りますね。ちゃんと理由も話したし」

「え、もう…?それじゃあ、せめて連絡先だけでも教えてもらえませんか?」

やっと再会できたのに。何とか連絡先を聞き出さなければ、と焦る僕だったが、紗季は涼しい顔をしてこう言った。

「でも…あなたのこと、まだ良く知らないし」

「じゃあ…、僕を知るチャンスをくれませんか?日曜日の夜9時、リッツの『ザ・バー』に来てください。あなたが来るまで待っています」

あの時の僕は不恰好なほど必死だった。何とか目的を果たすため、少しでも彼女に近づこうとする。それなのに、思ったようにうまく行かない。

僕は初対面の女性と楽しく話をできる程度には、コミュニケーション能力があるはずだった。だが、彼女を前にするとペースを乱されてばかりで、全く通じない。

「日曜日は何か予定が入っていた気がするから…どうかな」

「少しでいいです。もし来てくれたら…そうだ、僕のとっておきの『面白い情報』を話してあげます」

「面白い情報…?」

紗季はその言葉に、今まで全く無関心だった僕に少しだけ興味を持ったようだ。

「えぇ、とっておきの。だから、ぜひ来てください」

「気が向いたらね。ごちそうさま。おやすみなさい」

そう言うと、僕が店を出るのを待たずに、さっさとエレベーターに乗って帰ってしまった。



そして約束の日曜日。僕はいつもより入念に身支度し、予定通り『ザ・バー』で彼女を待った。

だがやはり…と言うべきなのだろうか。

2時間以上経っても紗季は現れない。それでも僕は、ずっと彼女を待ち続けた。

ラストオーダーが終わり、閉店の時間10分前。

人々が帰ろうと外に出る流れに逆らって、彼女が現れたのだ。

この記事へのコメント

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No Name
先手打たれすぎ。口説きたい感じが出てないから、そりゃあ警戒する。
2019/03/14 05:3799+返信2件
No Name
おいおい爽太郎のネタがどれもおもしろくないじゃないか。芸能人の方デート目撃って、大学生か〜い!
2019/03/14 07:0699+返信4件
No Name
これで本当に今まで口説けなかった女がいないの!?もっと誰もが唸るような方法で口説いても、なびかない設定にして欲しかったです〜!
2019/03/14 06:1799+
No Name
芸能人のデート情報で、相手が喜ぶと思ったんだ😅

行動が何か怪しい感じがヒシヒシと出てるし
この人秘書の仕事もあんまりできなそう。
2019/03/14 07:3854返信3件
No Name
爽太郎、ポンコツやな
2019/03/14 06:5153返信2件
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