「媚びない、錆びない。」女優・真木よう子が大人論を語ったら、その奥深さにぐっときた!

“魅力的”といわれる大人の女性たちは、いかにして32歳を迎え、通過していったのか。

女優として、そしてひとりの女として多くの経験を積んできた真木よう子が、自身の32歳を振り返りつつ、赤裸々な“大人論”を語ってくれた。


自由奔放でクール、飾らない、意志が強くて、言いたいことははっきりと言う、美しい、そしてどこかミステリアス……

真木よう子、と聞くと頭に思い浮かぶイメージはこのようなものだろうか。それはどれも、男性に限らず女性にとっても、魅力的なものだ。

それは彼女が演じる役柄ゆえなのか、それとも彼女がこれまで積み重ねてきた、波乱万丈な人生から滲み出てくるものなのか。

現在、36歳。ひとりの大人の女として、ひと通り経験した〝今〞の彼女だから語れる大人像に、迫ってみた。


「笑顔でいても、クールな顔を切り取られることが多いんです」

「若かりし頃は、30代っていうとひとりでバーに行ってシャンパンをいただくような、そういう格好いい女性を思い描いていた気がする。それか、母親として家庭に入っているか」

自身の20代を振り返って、当時イメージしていた大人の女性像を、淡々と語りだしてくれた真木さん。しかし直後に、「実際は反面教師にしていましたけどね」とニヤリと笑う。

「当時、たまにバーで年上の女優さん方と一緒になることとかがあって、『目が覚めたら車の下だった』とか『駐車場で寝てた』とか、20代の頃にそういうエピソードをたくさん聞いて、自分はそうはならないようにしようって思っていました(笑)。酒豪が多いんで、この世界は。楽しい人たちばかりでしたね」

ちょっと皮肉めいたことを言いつつも、その年上の女性たちは真木さんの瞳には、とても魅力的に映ったのだろうと感じる。

「30代でも年齢を感じさせない、よくいえば20代に見える無邪気さがあって、年下の私にもフレンドリーに接してくれるような、可愛らしい方たちばかりで、大人の品格を持ちつつもチャーミングな部分も残っている、素敵な女性が多かったですね」

当時を思い出しながらくしゃっと笑う真木さんを見て、彼女もまた大人のチャーミングさを持ち合わせた女性になっているのだと気付く。

憧れる大人の女性の輪郭がぼんやりと見え始めた20代後半を経て、30代に突入すると、遊び方も徐々に変わっていった。


「30前後は一番遊んでいましたね。ちょうど32歳くらいの頃に、秘密にしておきたい隠れ家のようなお店を知って、ひとりでも行くようになりました。周りにグルメな方も多くて、美味しいお店にたくさん連れてってもらってはそこでまた繋がりができての繰り返しで人脈も広がりました」

ドラマや映画の俳優チームで食事に行くときの店選びは、ほとんど真木さんが担当していたのだとか。

「三宿も行くし中目黒に西麻布に、駒沢も行くし……エリアも店のレパートリーも、おのずと豊富になっていくのが大人なんでしょうか」

そんな側面でいえば、真木さんが大人になって変わったことが、またひとつあるようだ。

「歳を重ねて店のレパートリーは増えつつも、反比例して、最近は以前ほど外へ繰り出さなくなりました。飲みに行く店だって、もはやウーロンハイがあればどこでもいい(笑)。

遊び尽くすとそうなりません?『東京カレンダー』に載っているようなラグジュアリーなお店も制覇したけど、結局は赤提灯が一番落ち着く(笑)。こういうのもきっと、大人になったってことなんでしょう?」


今回のテーマでは、32歳を大人としてのひとつの分岐点と掲げているが、真木よう子なりの32歳は、「教わることが楽しくなる時期」だと話してくれた。

「20代の時より年上と話も合うようになってくるし、徐々に大人の階段をのぼるというか、いろんな場所へ連れてってもらえるようになる年代なのかも。また、それを楽しめる年。

年上と付き合うと、仕事の捉え方も変わってきますよね。先輩の俳優さんにお仕事の相談をしたときに、ぽんっと言われた言葉にハッとさせられたりすることもよくありました」

大人への道が開けていくと同時に、仕事や人生の正解を探し求めて、もがいていたのもこの頃だった。

「実は、プレッシャーに弱かったんです、私。与えられた仕事を最後までやり遂げられるか、周りの期待を裏切らずにちゃんと応えられるか、とかを執拗に考えてしまう時期だった。今はだいぶ変わりましたよ。子どもができてからかな、もう無駄なことは考えなくなったのは」

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