ノリオとジュリエット Vol.4

ノリオとジュリエット:超がつくお嬢様からの積極アプローチに、庶民の男が陥落した夜

樹里の告白


「私、紀夫さんが好きです」

樹里はもう一度そう言って、紀夫をまっすぐに見上げた。

リビングに置かれた黒い革張りのソファ。その右端にちょこん、とおさまる樹里は華奢で、小さくて。紀夫の目に、無条件に守るべき存在に映る。

「俺も…好きだよ」

さっきは言えなかった言葉を、今度は口にした。

不思議なもので「好き」と声に出した瞬間、それまでぼんやりとしていた感情が急に象られはじめる。

樹里のことが、好きだ。

湧き上がる感情は、紀夫の胸をじんわりと温めていく。

しかしそんな紀夫と対照的に、樹里はなぜかみるみると表情を曇らせるのだった。


「だけど…私、許婚がいるの」

「…え?」

今、なんて?

樹里の口から出た言葉はまったく予想外で、紀夫はすぐにその意味を理解することができない。

そもそも「許婚」というワード自体、一般庶民の紀夫の人生には登場したことがないのだ。

「いいな…ずけ?」

......


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