エビージョの恋 Vol.3

エビージョの恋:既婚男に“誠実さ”を求めた女の無残な結末。世間に許されぬ恋に、幸せはない

―いつかは、別れると決めてる。彼とも、この部屋とも、そして“恵比寿”ともー

......でも、それは今日じゃない。

上司と道ならぬ関係に足を踏み入れてしまった志乃(28)は、恵比寿在住。

妙齢の女は、多くの不安や葛藤を抱えながらも、甘く刺激的な恋から抜け出せずにいた

一見、華やかに見える“エビージョ”と呼ばれる女。

その隠された素顔と、“恵比寿”という街が若者を魅了する真意とは...?

志乃は同じく恵比寿に住む好青年・哲也と二人で会うようになるが、やはり上司・浩一の存在は無視できず...?


一体、どこで何を間違えたのだろう。

ふと我に返ったとき、志乃はそんな風に思うことがある。

容姿や性格に特に難があるわけでもなく、育った家庭環境も円満。受験も就職も自分なりに努力をして、概ね希望通りの人生を歩んできた。

テレビ局入社後は、自分でも思った以上に仕事に精を出していた。昼夜問わずの激務で体調を崩し、美容やファッションを疎かにする時期もあったが、仕事は楽しくやりがいがあった。

だが、充実した日々を過ごし、真面目に生きているつもりでも、こうして道を踏み外す女が世の中には存在するのだと志乃は実感する。

浩一と関係を持つようになってから、堅実だった志乃の人生はガラリと変わった。

ふと胸をよぎる罪悪感や不安、通常の恋人のように大っぴらには人に話せず、嘘と誤魔化しが混じる会話。

女友だちの結婚や妊娠報告に対しては徐々に心が麻痺していったし、常に日陰を歩くような現実味の薄い日々は、すでに志乃の身体の一部のような感覚がある。

それでも、自分は愛を貫いていると自己陶酔することもあれば、28歳にもなって一体何をやっているのだろうと激しい自己嫌悪に陥ることもあった。

自宅へ向かう帰り道、志乃は恵比寿ガーデンプレイスを歩きながら、まるでヨーロッパのお城のような『ジョエル・ロブション』をぼんやりと見上げる。

誰もが一度は憧れる、恵比寿の大御所フレンチ。友人の何人かは、ここでプロポーズをされたという。

だが志乃は、果たして自分にもそんな日がやってくるのか、全く想像ができなかった。

【エビージョの恋】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo