翔はそっとテーブルを離れて、カウンターエリアで一息つく。一度席を立って、戻るときにさりげなく千尋の隣に座ろう。そんなことを思いついたのだ。
カウンターには、煙草をふかす何名かの男たちの姿があった。ここは店内で、唯一の喫煙可能スペースなのだ。
翔はポケットから、最近お気に入りの電子タバコDR.VAPE(ドクターベイプ)を取り出して一服することにした。
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DR.VAPEの存在を知ったのは、会社で同僚と話していたときのことだ。ふと彼のデスクに目をやると、PCのUSBポートに見たことのない物体がささっていた。翔が思わず「何これ?」と尋ねると、同僚は言った。
「これ、知らないのか?電子タバコだよ」
実はそれまで、数種類の電子タバコを試したことがあった。しかし、箱型のフォルムに抵抗があったり、独特のクセのある香りが好きになれなかったりして、断念したのだ。
DR.VAPEのデザインが一目で気に入った翔は、それ以来普通の煙草から切り替えることにした。
女性の目の前で煙草を吸うことは、8年前からとっくに控えている。それでも体に匂いが残るのが気がかりで、どこで吸っていても、なんだか落ち着かなかった。
しかしDR.VAPEに変えてからは、嫌な匂いも気にならなくなった。こうしてためらうことなく喫煙スペースで一服できることにも、ほっとしていた。
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「翔くん、隣、いいかな?」
名前を呼ばれて我に返ると、目の前には千尋が立っている。翔は反射的に、しまった、と思った。過去の食事会のトラウマが、再び蘇ったのだ。
—タバコを吸う男は嫌だって、また幻滅されるかも…。
しかし、動揺する翔の目に飛び込んできたのは、なんとポーチからDR.VAPEを取り出す千尋の姿だ。
千尋はくすりと笑いながら言う。
「普通のタバコは抵抗があるんだけど、これ、ニコチンもゼロだし、すごくオシャレで香りがいいから…」
確かに、DR.VAPEのスリムなフォルムは、千尋の細長い指を一層美しく見せている。うっすらと微笑を浮かべながらDR.VAPEを口元に運ぶ千尋が、さっきよりもさらに女らしく見えて、翔は眩しくなった。
思いきって、千尋に言った。
「実は俺、千尋ちゃんとどうしても話してみたくて。声かけるのに、一旦落ち着こうと思って一服しにきたんだよね」
するとそれまでクールな表情を絶やさなかった千尋が、顔をくしゃっとさせて、満面の笑みを浮かべる。
「そうだったんだ…。実は私も同じこと考えてた。翔くんに話しかけようと思って、ここまで追いかけてきちゃったの」
2人は驚いた顔で見つめ合い、そして照れたように笑うのだった。
8年前には煙草きっかけで肩身の狭い思いをした翔だったが、時は移り変わり、こうしたきっかけで女性と笑い合える日がくることに、嬉しさを隠しきれずにいた。
港区男子・翔が愛用しているDR.VAPEの公式HPはコチラ!
■衣装協力:男性 スーツ¥48,000シャツ¥9,800タイ¥6,800〈すべてユニバーサルランゲージ/ユニバーサルランゲージ たまプラーザ テラス店☎045-905-1861〉その他スタイリスト私物/女性 ネックレス¥18,500ピアス¥33,056〈ともにアビステ☎03-3401-7124〉
■撮影協力:フレンチごはん 西麻布ジーナ