一流の人、ものが揃っていると分かってはいても、私たちの世代にはどうも馴染みが無い街、銀座。
同じく「銀座とは縁がない」と話すのは女優の倉科カナさん。30歳になった今、彼女はこの街から何を感じ取るのかを聞いてみた。
「可愛らしい? そう演じるのも私のプロとしての仕事です」
今回女優・倉科カナさんをお連れしたのは、2017年4月に誕生した銀座エリア最大級の複合商業施設『GINZA SIX』。中央の大きな吹き抜け空間には、世界のアートシーンで活躍する前衛芸術家・草間彌生氏のカボチャのバルーンがシャンデリアのように吊り下げられている。
12月23日に30歳を迎えた倉科カナさんは、それを目にして「すごい迫力ですねえ」としみじみした表情で言った。
「私、実を言うと、今まで銀座とはご縁がなかったんです。正確に言うと、ドラマのロケで来たことはあります。けれど、撮り終えたらサッと次の現場に移動してしまうので、自分がどこにいたのかちゃんと認識できていなくて。
この『GINZA SIX』の存在も、実は今日、初めて知りました。すごく晴れやかで、いるだけで自然と気持ちが高まる。さすがは銀座、という感じです」
倉科さんが、普段買い物や食事で、よく出没するのは恵比寿や三軒茶屋など、渋谷を中心とするエリアらしい。その理由は「日常の延長線上にあるから」。
「若者や、あるいはその街に住んでいる人が街に多くいるせいか、全体的にアットホームな雰囲気が漂っている気がします。飲食店に行っても、いつのまにか隣の人と仲良くなってしまうような。
実際、私もカウンター席に座って、たまたま居合わせたお客さんに『1杯どうですか? ごちそうしますよ!』と声をかけることもありますし」
倉科さんのような美女と差しつ差されつできるとはツイてる人がいるものだが、まあ、それはさておき、倉科さん、意外にもなかなかの男前である。
「5人兄弟の長女として生まれ育ったせいか、私自身は、誰かのために何かしてあげたいと思う世話焼き人間。その本性を知って、肩透かしを食らう人は結構いるみたいです(笑)」
肩透かし――たしかにそうだ。男性はもちろん、女性も瞬殺されてしまうような笑顔を持つ倉科さんには「男前」ではなく「可愛いらしい」という表現がぴたっとハマる。けれど、当のご本人は、その作られたパブリックイメージから抜け出したいと抗ったこともあったようだ。
「私ぐらいの年代は〝戦国時代〞と称されるほど女優が多いんです。つまり、求められていることを瞬間的に表現して結果を出せなければ、自分の居場所を失いかねない。
だから、息継ぎする暇もなく全力疾走していた頃は〝倉科カナ=可愛いらしい〞という表面的なイメージを疎ましく感じたこともありました。コレさえなければ、もっと深く表現させてもらえる場が得られるのかもしれないのに、って。でも、いつしか気づきました。
“火のないところに煙は立たぬ〞じゃないけれど、可愛らしいというジャンルに括られる要素があることは自分の特徴のひとつ。だから、払拭しようと躍起になるのではなく、誠実に受け止めよう。ありのままでいる方が肩の力が抜けてラクなのだと、今は素直にそう思えています」