2011.10.21
受け継がれる美食遺伝子 Vol.1未だ見ぬ“焼物”という名の頂へ。それぞれの、道程
未だ見ぬ“焼物”という名の頂へ。それぞれの、道程
同門を出立、それぞれの哲学を胸に、東京で日夜、日本料理の可能性を追究する俊英たち。彼らが料理人として最大のテーマと捉え、その神髄を求め続ける調理法こそ、炭火焼である。
「この世に備長炭がなくなったら、料理をやめるかもしれない」『小十』奥田透氏は、そう言い切る。煮物や蒸し物といった調理法と違い、食材が自らの脂で香りと味を増幅させる、シンプルかつ深遠な炭火焼は、3人の中でも王道を貫く奥田氏の真骨頂が垣間見えるアプローチである。
一方、対極とも言えるテンションで素材と対峙するのが『龍吟』山本征治氏だ。先人たちの技をただなぞるのでなく、そのプロセスがなぜ生まれたのかを考え、膨大な試行の末、現在の最高到達点を表現する。「火にも味がある。私は、炭火を“美味しい火”と呼んでいます。素材の表面温度を一気に高め脂肪分を溶かし、その脂で揚げ焼きのように。炭を操れれば、料理の新たな世界を表現出来ます」と語った。
ふたりと同門、『小十』で7年間研鑽を積み、今年独立を果たした『東家』坂内晃氏。開店準備中には『龍吟』のみならず『ランベリー』でも研修を重ね、フランス料理店ならではの炭火使いも習得した。「炭火焼は余計な脂が残らない。肉は、そのジュを閉じ込めるように焼くことで、火が入るほど本来の旨みが引き出せるようになるんです」と氏。
三者三様の個性が顕現する、日本料理の地平にある“炭火焼”という峻嶺。その頂を目指す一歩一歩が、皿に刻まれていく。
3店共通のメイン素材、大うなぎ。「料理は、炭で焼いて素材自身の味と香りを包ませることこそ最上」と言う奥田氏の、執念にも似た食材へのアプローチが、ここに凝縮する。対照的に、淡泊なかますには松茸の香りと食感を包み込み、そのポテンシャルを最大化する。
※この店舗は、現在休業しております。
サンマの内臓、脂、香りを集約させ、邪魔な骨を全て除く方法……。考え抜き、山本氏が辿り着いたのは、おろしたサンマに炭焼の茄子を巻き、醤油で香りを付けた内臓のソースをサンマに戻しながら焼き上げることだった。松茸は黒酢をかけながら炭火焼に。
※こちらの店舗は現在閉店しております。
坂内氏がこのひと皿で表現するのは、日本料理ではまだノウハウの少ない牛肉への"挑戦"。最適な熟成と、塊のまま炭火焼にすることで、繊維質の食感と旨みは最高潮へと導かれる。合わせたのは、松茸とエボダイ。1+1が3になるような、相乗効果で美味を追究。
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