2011.10.21
厳選!心を打つ究極のひと皿 Vol.1小山薫堂さんが「カンテサンス」を語る
自分の来し方行く末、そのルート上にぽつりと輝く存在。それが、各々にとっての「ひと皿」だろう。
研ぎ澄まされたシェフ自身を味わい、明日を想う皿。それが、薫堂さんにとっての「究極」だった。
2011.10.21
厳選!心を打つ究極のひと皿 Vol.1自分の来し方行く末、そのルート上にぽつりと輝く存在。それが、各々にとっての「ひと皿」だろう。
研ぎ澄まされたシェフ自身を味わい、明日を想う皿。それが、薫堂さんにとっての「究極」だった。
出逢いは多分、6年前のこと。小山薫堂さんが自身の会社「オレンジ・アンド・パートナーズ」を立ち上げた時と『カンテサンス』がオープンしたのは、ほぼ同時期。まだ店も岸田周三氏も知る人ぞ知る存在だった頃だ。
「天才的な技術と豊富な知識を以てしてもなお、スポンジのように多くを吸収する力のある人」と薫堂さんは岸田シェフを評する。そんな彼を、店を、応援したい。一緒に未来を歩んで行きたいと思う薫堂さんの行動は素早い。9月5日は会社の創業記念日。その前後には必ずここで貸し切りパーティを開いた。
「引き算の料理が好きなんです。ぎりぎりまで無駄を省き、必要なものの存在を際立たせる、そんな料理が」
「塩とオリーブ油が主役山羊乳のバヴァロワ」はまさに、その言葉に合致する皿だ。京都産山羊乳に百合根を加え、スペイン、イタリア、フランス産をミックスしたオリーブ油、そしてゲランドの塩をかける。
単純に見えて選び抜かれた素材とその絶妙なバランスに岸田氏の芯が垣間見える、開店当初からほぼ構成の変わらぬ店の顔である。
「彼の、食材に対する尊敬の念が見えるでしょう?おごりがない。それが、素敵だから」
だから「究極のひと皿」と問われたら、これしかなかった。薫堂さんは迷わず、言う。
実は「ひと皿」は幾つもある。真っさらな自分に還るなら早稲田『夢民』の「ベーコン野菜カレー」だし、人生を見つめ直すなら銀座『寿司幸本店』の「ばらちらし」。デートの切り札ならヴェネツィア『ドモーリ』で何てことないつまみとワイン…と、薫堂さんらしいセレクトは続く。「でも」。最終的に到達すべき味――それはこの皿だった。
「あっという間に遠く、高いところに岸田くんは行ってしまったから、応援というレベルではもう、ないんだけれど」と薫堂さんは笑う。料理は消滅するけれど、再度記憶を体験できる不思議な存在。味は未来に置いておくマイルストーン。「また食べに行こう」。過去の旨さを噛みしめるより、明日を想う。究極の意味は、ここにある。
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