女はいつしか、3つのカテゴリーに分類されてゆく。
「独身」か「妻」か、はたまた「ママ」か。
結婚・出産でライフスタイルが急変する女の人生。恋愛から結婚、そして子育て。それぞれのカテゴリーで、興味の対象も話題もがらりと変わってしまう。
違うカテゴリーとなった女ともだちとは、もはや疎遠になっていくしかないのだろうか?
まだ「地雷」も「禁句」もなかった、あの頃
懐かしい笑い声が聞こえた気がして、原口沙耶(はらぐち・さや)は店の奥に目をやった。
昨夜は撮影の立会いがあって遅かったから、今日は午前休をとっている。
出社前に立ち寄ったけやき坂の『ローダーデール』奥のテーブル席で、大学生であろう3人の女の子たちが、何やら楽しくて仕方ないという風に笑い合っているのが見えた。
会話の中心は、沙耶から見て右奥に座る、ボブヘアが可愛らしい女の子。
彼女が身振り手振り大げさに話す言葉に、隣に座る巻き髪の女の子が笑いながら突っ込み、ふたりの正面に座るショートヘアの女性は、そんな2人をにこやかに見守っている様子である。
デジャブのようだ、と沙耶は思った。
ーそう、私たちにもこんな時代があった。
“私たち”というのは、大学時代からの仲良し3人組、沙耶とあゆみ、そして理香のことである。
少し鼻にかかった高い声で話すボブヘアの彼女は、昔のあゆみにそっくりだ。抑揚の感じや間の取り方まで本当によく似ていて、タイムスリップしたような錯覚に襲われる。
まだ全員が同じラインに立ち、ひたすら恋に悩んでいたあの頃。
「地雷」も「禁句」も存在しなかった時代。
視線の先で彼女らがまた大きな笑い声をあげて、懐かしい残像が現実にすり代わる。
弾ける笑顔が放つ光はあまりに眩しくて、沙耶の心に一筋の影を落とすのだった。
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