あるベンチャー企業に、MARCH出身の5人の男たちがいた。彼らは、こう呼ばれている。
―無難戦隊MARCHマン―
「平均より良くても、所詮上には上がいる。俺らは、どんな理不尽な仕打ちにも、無心で打ち返すだけだ。」
それが5人の口癖だ。
「無難」と言われながらも、必死に頑張るMARCHマン。しかし、そこに東大卒の嫌味な上司が舞い降りた。
こうして彼らの闘いが今、始まった…!
MARCHマンたちの前に東大卒の上司、現る!
「はじめまして。今期から第一営業部で皆さんと一緒に働くことになった、東出です。」
東出がそう言ったとき、「キャリアナビ」第一営業部は明らかにざわついた。それもそのはず。先週までいた体育会系の親父から一転し、彼より一回りほど若い上司が現れたからだ。
社長の小日向が、説明をする。
「東出は、東大の後輩だ。総合商社で10年働いたあと、自分で独立してやっていたが、うちの会社の事業拡大に伴って、声をかけた。今日から彼が、皆の上司になる。」
そう紹介された東出は、180センチを超えるスラリとした長身に甘いマスクを持ち、「天は二物を与えた」と何度となく言われてきた男。35歳だが、見た目には気を遣っているため年齢より若く見られることが多い。
対照的に、隣の小日向は人の良さそうな顔立ちだが、生え際は綺麗に波打ち、頭頂部は少し寂しい。東出より5つ上の40歳とはいえ、大分くたびれた印象だ。
「それじゃあ東出、頼んだよ。」
小日向は不敵な笑みを浮かべ、放心状態の社員を置いて出て行った。
「キャリアナビ」は元々web系の制作会社だ。そこから派生して、企業の採用ホームページを作ったり、人材系のコンサルティングもやっている。
この「キャリアナビ」には、ある特徴があった。それは、MARCH卒の人間で溢れ返っていることだ。
特に、この第一営業部は、明治・青山学院・立教・中央・法政、5人の男が揃っていた。
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