すらりとした長身にロングの巻き髪。目鼻立ちがはっきりとした美しい顔立ちは、まるでモデルか女優のよう。
僕らのグループ以外の男たちも含めて、店内にいる誰をも魅了してしまうオーラを美也子は持っていた。周囲の男たちは、一様にみんな腰を浮かして、後からきた極上の女を食い入るように見つめていた。
「ここ、いいですか?」
周囲を見渡し、僕の隣の空席を見つけた美也子は、こう言って僕の隣に腰を下ろした。甘い香りが一際ぷーんと香る。
形勢逆転!……とばかりに、僕は心の中でガッツポーズをした。
なかなかお目に掛かることのない超ド級の美女が僕の隣の席に収まったのだ。勝ち誇らない方がおかしい。周囲の男たちの羨ましそうな視線が僕の目に心地よく映った。
美しい花に魅せられた男が挑む勝負の行方
聞けば、美也子は26歳。外資系ラグジュアリーブランドのPR担当だという。学生時代にはミスコンで優勝したり、レースクイーンのバイトをしていたとか。美しい容姿だ、無理もない。
ここはなんとかして仕留めなければ。今年一番の大勝負と心に決め、自分の中で、女子受けすると確信する鉄板のネタを次々と投下していった。
「男性のタイプで言うと、どんな人が好きなの?」
「うーん、爽やかな人かなぁ。俳優で言うと岡田将生さんとか」
「あ、似てるって言われたことある(笑)」
「でも、言われてみれば確かに、目元とかちょっと似てるかも~!」
「うそ、冗談だよ(笑)」
「なにそれ~(笑)でも、ほんと、ちょっとだけ似てるよ。 杉本さん、綺麗な顔してるよね♡」
なんて、ジョークを交えたトークで二人の心理的距離は徐々に近くなっていく。
休みの日の過ごし方を聞くと「映画とか音楽鑑賞とか。秘かに公園でぼーっとするのとかも好き」という美也子。
思いのほか可愛い趣味に、思わず頬が緩む。恋に落ちる重要要素、“意外性”もバッチリだ。
音楽はPerfumeが好きだという美也子。なので
「俺もPerfume好きだよ。知ってる?幕張で今度コンサートがあるんだよ。よければ一緒に行こうよ」
と思い切って誘ってみた。
すると、美也子は大きな目を更に見開き、薔薇が花開く瞬間のように華やかな微笑をたたえながら、
「わぁ~!!本当?むっちゃ嬉しい!!ずっと前から行きたかったんだ~♡」
と歓声をあげ、積極的にLINE IDの交換に応じてくれた。
そんな状態だったので、合コンがお開きになる頃には二人の世界が完璧にできあがっていて、僕は美也子を手中に収めたも同然だと思っていた。
( この調子なら、きっといける……!)
僕は、この成功を確実なものとするためにも、美也子の耳元でささやいた。
「この後、少し時間ある? 二人っきりでもう少し飲もうよ」
最後の一撃だという渾身の想いを込め、いやらしくないギリギリのラインの甘い声で。