これでアニメ!『東京の今』を切り取るアニメーションアートが開催

1973年、大分生まれの佐藤雅晴は、東京芸術大学油画学科に学んだ作家である。しかし、在学中は絵画制作に意味を見出せず、一切描くことがなかったという。

やがて日本での制作に行き詰まり渡独。以後10年にも及ぶドイツでの生活の中で辿り着いたのが、独自の手法によるアニメーション制作であったのだ。

「Calling」のドイツ編では、10年もの歳月をデュッセルドルフで過ごしながらも居場所を見い出せないでいた佐藤氏が、12の身近な光景を時間の移ろいも交えて精緻にトレースすることで、その土地を理解し、関係を密に結ぼうとしていた様子が窺える。/「Calling(ドイツ編)」 アニメーション、ループ (7 分)、シングルチャンネル ビデオ、2009-2010年。

「Calling(ドイツ編)」 アニメーション、ループ (7 分)、シングルチャンネル ビデオ、2009-2010年

「Calling」ドイツ編について

佐藤氏は、実写をトレースする行為について、「対象を自分の中に取り込む儀式のようなもの」と説明している。それは画家が名画を微細なタッチまで模写することでその制作を追体験し、作品の本質に辿り着こうとする行為と似ているかもしれない。

唐突になりだす電話の着信音には、異国でのコミュニケーションの不成立、繋がらないことで高まる佐藤氏の孤独や不安が表れているとともに、閉塞感や状況を打開する微かな希望も感じさせる。

一方、「Calling」の日本編は、2014年にニューヨークで開催されたグループ展、「Duality of Existence - Post Fukushima」の出品作。/ 「Calling(日本編)」 アニメーション、ループ(7 分)、シングルチャンネル ビデオ、2014年

『Calling』日本編(2014年)

ドイツから帰国した直後に遭った東日本大震災、そして間もなく自身と家族を続けざまに襲った病魔との闘いなどを経て生まれた作品だ。

ドイツ編と同じく作家の暮らす街の日常をトレースしたものであり、また同様に電話の着信音が鳴り続ける状況でありながら、ここでは作家の視線は自身の内のみならず外の世界へも広がる。それは人の消えた街、見捨てられた街の不安や孤独をも表している。

「バイバイ カモン」 (2010年)より

■イベント概要

イベント名:『ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴─東京尾行』
期間:1/23(土)~5/8(日)
時間:11:00~17:00
会場:原美術館 ギャラリーⅠ、Ⅱ(品川区北品川4-7-25)
休館日:月曜定休、3/22(火)
料金:一般 1,100円/大高生 700円/小中学生 500円
TEL:03-3445-0651
FAX:03-3473-0104

※祝日を除く水曜は20:00まで開館
※入館は閉館時刻の30分前まで可
※原美術館メンバーと、学期中の土曜日は小中高生の入館が無料

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