後部座席でときめいた、外資系PR、夕莉の心情
ラウンドを終えた帰り道。私は疲れた体を、後部座席に深く預ける。スコアはさんざんだったけれど、思いきり運動できて楽しい1日だった。
背もたれをそっと倒し、オットマンに脚を伸ばす。肌に触れるシートはやわらかく、まるで抱きとめられているみたい。朝以上に快適さが身に染みる。
「後ろ、寒くない?」
運転席の良明が気にかけてくれる。
「前のディスプレイでも温度調整できるよ。ちなみにスマホの充電はシートの横ね」
クルマが静かに走り出す。メロウなジャズが、車内いっぱいに満ちていく。目の前のモニターで映像を楽しめるみたいだけど、今はこの素敵な音色に身を委ねていたい。
「疲れてるでしょ、寝てていいから」
良明の言葉に甘えて、私はそっと目を閉じた。まどろみの中、高校時代の遠い記憶を思い返す。
あれは2年の秋だったか。部活の大会直前にレギュラーを外され、私は駅のベンチでひとり落ち込んでいた。
そこに偶然良明が通りかかって、理由も聞かずにあたたかい飲み物を買ってくれた。そして、一緒に家まで歩いてくれたっけ。良明の家は、反対方向だったのに。
彼の素朴でさりげない優しさは、大人になった今も変わっていない。気づけば、見慣れた景色。もう家も近い。
ハンドルを握る良明の横顔を、そっと見つめる。思えば高校時代は、健人のように分かりやすく格好いい、社交的な人に惹かれていた。大人になってからも、そんな男性ばかりと過ごしてきた。
でも、なぜだろう。昔の私なら「いい人」で片付けていたはずの良明の優しさが、今は妙に心に残る。
「そろそろ着くよ」
その声に、私は慌てて伝える。
「良明、今日はありがとう。また行こう」
健人が「その前に、俺と夕莉で練習しよう」と割り込んできた。私は、曖昧に笑ってかわす。
クルマから降りると、窓から良明が手を振ってくれた。
走り去るテールランプを見送りながら思う。良明、素敵な大人になったよなあ。久々に胸が高鳴った。次は後ろじゃなく、助手席に座ってみたい。
「今度は、ふたりで出かけない?」
―― 帰ったら、そんな思い切ったメッセージを送ってみようか。
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Photos/Yuji Kawata@Riverta Inc., Styling/Mariko Kawada, Hair&Make-up/Ryohei Katsuma, Model/Omija Hazuki、Kaoru Ito、UMARU@BARK IN STYLE, Text/Haruka Yasuoka




