A1:女性はこうあるべき、という偏見がある。
拓実と出会ったのは、友人の紹介だった。端正な顔立ちに清潔感のある爽やかな雰囲気。少し神経質そうではあったものの、最初のうちは、そこは気にならなかった。
お互いに29歳で、しかも職場も丸の内ということもあり、とても自然な流れで、二人で食事へ行くようになった。
すると、何度目かの食事の時に、拓実の方から告白をしてきてくれた。
「由梨、僕たち付き合わない?」
「はい」
「そろそろ結婚したい」と思っていた私にとっては、最高のタイミングだった。
相手は条件的には申し分ないし、何よりも一緒にいて楽しい。だから、このまま幸せな日々が続き結婚する…。そう信じていた。
しかし、恋愛において完璧なんてことはない。
交際してから、私はいくつか気になることが出てきた。まず、拓実の金銭感覚だ。拓実は、細かいところでも必ずお会計を折半する。
コンビニや週末のランチも基本的に綺麗に割り勘。今は私も働いているから構わない。
週末に外でランチをしても、自分も支払う方が相手に借りを作らない気がして楽だ。
「由梨って、ちゃんと全部折半にするよね」
そう感心する拓実に、私は笑顔で返す。
「お互い仕事をしているうちは、折半の方が楽だなと思って。どちらかの負担が重くなると、関係性が崩れる気がして」
年収は、きっと拓実のほうが上だと思う。でも、今は働いている以上、奢って欲しいとか思っていない。
ただもちろん、私にも例外はある。
「でも、何かあったらよろしくね。女性には出産とか色々あるから、働けなくなる時期もあるわけだし」
もし結婚して子どもを授かったとき。女性は、必然的に休まなければいけない時がくる。
ただこの話をした時に、拓実は素っ頓狂な返答をしてきた。
「でも由梨の会社だったら、育休中とか手当も厚そうだしいいよね」
「どうなんだろう?多分いいとは思うけど」
― これはつまり、出産・育児休暇中でも支払いはそのままってこと…?
私がそう不安になるのには、いくつか理由があった。
まず、拓実は無意識に「女性はこうあるべき」を当然のように押し付けてくる傾向がある。
「ちなみに由梨は、結婚しても仕事は続けるでしょ?」
「うん。続けるよ。でも今の会社にいるかどうかはわからないな。転職するかもしれないし」
「え〜やめときなよ、転職なんて。由梨の今の会社、条件もいいし。年収だって悪くないでしょ?」
彼氏や大事な人だったら、ここは応援してほしい。でも拓実は悪意なく、ネガティブな言葉を私にぶつけてくる。
「うん、まぁそれはそうだね」
「お互い安定した会社で働いていたら、家のローンだって通りやすいし…。何よりも子どもが生まれた後、由梨が子育てしながらでも働きやすい会社を希望するなら、絶対に今の会社にしがみついていた方がいいよ」
「そんなことまで考えているの?」
現状、お会計などは折半で対等な関係のはずなのに、“家のことは女性がするもの”という考え方も垣間見える。
― 結婚したら、ちょっと面倒くさそうなんだよね…。
実は交際当初から、密かに私はこう思っていた。








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