A2:「忙しい」は言っていい。でも、具体で上書きしなければ意味がない。
時間が経つにつれて、私たちの間には、じわじわと静かな距離ができていった気がする。
でも別に、どちらかが悪いわけじゃない。ただ、二人の間の空気が少しずつ薄くなっていく…そんな感じだった。
― 健太:また間が空いてしまってごめん!杏ちゃん、最近は忙しい?
― 杏:元気ですよ。健太さん、お忙しそうなで、連絡控えておりました。元気ですか?またご飯行きましょうね☺️
毎回、こんなLINEは来る。でも、「また来週か再来週あたりに」という言い方で終わる。
最初は「コンサルって本当に忙しいんだな」と思っていた。
でも3回目のデートが1ヶ月以上空いた頃から、私の中に少しずつ疑問が芽生えてきた。
― 本当に忙しいの?それとも、私の優先度が低いだけ?
もちろん、直接は聞けない。
仮に「私って、優先されているのかな?」なんて聞いた日には、それこそ重い女認定だ。
だから私は、LINEの既読がつくタイミング、返信の速さ、文章の温度感などで彼の気持ちを読もうとしていた。
既読が早い日は「今日は少し余裕があるのかも」とか、返信が短文のときは「疲れているのかな、それとも気持ちが冷めた?」というように…。
しかし、そんなことを毎回しているうちに、疲れてきた。
― なんで向こうの予定に振り回されないといけないんだろう?
そう思い始めた。
そしてようやく迎えた1ヶ月ぶりのデート。健太は、麻布十番の『B-TRE』というとても素敵なところへ連れて行ってくれた。健太の余裕を感じる。
「何だか久しぶりだね。元気だった?」
「そうですよね。元気といえば元気ですし…普通です。健太さんは?」
「本当に忙しくて。新しいプロジェクト任されて」
「すごいですね!」
「忙しい」という言葉は、使い方によっては万能だ。断る理由にも、曖昧にしたい関係に対する言い訳にもなる。
私には、健太の「忙しい」がどの種類なのか、正直わからなかった。
本当に忙しいのか、私のことを後回しにしているのか、それともフェードアウトへの助走なのか…。
ただ、このデートの会話で、私は驚いたことがある。
「杏ちゃんって、束縛とかしないタイプだよね?」
「はい、しないと思います。でも健太さんもしなさそう」
「しないけど、でも付き合ったら意外にマメだよ」
― え?じゃあ私には興味ないってこと?
連絡は取るけれど、マメというほどではない。加えて、デートの間隔が1ヶ月以上空いている時点で、答えは出ている気がしてきた。
運ばれてきた、美味しい「赤エビとウニのトンナレッリ」を食べながら、頭の中でグルグルといろんな思いが巡る。
会うと、とても楽しい。でも、次の具体的な誘いがなく、会う頻度も低い。たぶん、これが答えだ。
この日ももう1軒近くのバーへ行き、気がついた時には24時を過ぎていた。
「遅くまでごめんね。今日はありがとう」
「こちらこそです。ご馳走さまでした」
「本当に大丈夫?ちゃんと帰れる?」
「大人ですし、大丈夫ですよ(笑)。ありがとうございました」
「うん、じゃあまたすぐにね」
― その“すぐに”はいつですか?
忙しい中でも時間を作ろうとする、その具体的なアクションこそが、相手への誠意になると思う。
私も「来週の何曜日ですか?」と聞きたかった。本当は「会いたい」と言いたかった。
でも言えなかった。
健太と何となく自然消滅になってから考えてみたけれど、私は私で、「察してほしい」と思いながら、察してもらうためのヒントを何も出していなかったと反省している。
私の方も、“男性から誘って欲しい”という、無駄な理想とプライドがあったことは否めない。
だから、今回に限ってはお互いさま。
「次は、もっと積極的に動こう。予定だって、別に聞いてもいいじゃない」
そう自分に言い聞かせながら、私は次の恋を探すことにした。
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週末に連絡が取れない男は…








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