A2:運転が下手すぎて、色々悟った。
初デートから少し日が経ってしまったけれど、お互いの休みが合った土曜日に、私たちは軽井沢へ日帰りデートをすることになった。
当日。「ドライブデートなので、パンツかな」など色々と考えて、義樹の到着を待つ。すると「着いた」との連絡があり、ワクワクしながらマンションの下へ降りると、高級外車で迎えにきてくれた義樹の姿が目に入る。
「義樹さんの車、かっこいいですね…!これに乗れるの、嬉しい」
「実は買い替えたばかりで。結構スピードが出るから、しっかりつかまっていてくださいね」
最初は、私もはしゃいでいた。しかしドライブの途中から、少し様子がおかしくなってきた。
まず、義樹がスピード狂だったのだ。
「結構スピード出るんですね」
「やっぱりこの車の醍醐味は、このエンジン音にありますからね」
「男のロマンって感じですね!」
高級車なので、スピードが出ることは知っている。しかしSUVタイプだったらまだ良いかもしれないけれど、スポーツカータイプの車高が低めの2シーターで、スピードを法定速度ギリギリまで出されると、シンプルに怖い。
しかも最初から、さらに気になっていたことがある。それは、車内が無音なことだった。
「義樹さんって、いつも音楽は何を聞かれるんですか?」
話が盛り上がっていれば良いけれど、二度目ましてのデートで片道約2時間。無音は、結構辛いものがある。
「実は、あまり聞かなくて。うるさいのが苦手なんですよね。何か音楽つけますか?」
「もし何かあれば。でも、うるさいの苦手だったら大丈夫です」
「あと少しなので、行っちゃいましょう」
― 何話せば良いのよ…。
その気疲れがピークに達した時だった。ようやく軽井沢へ入ったものの、目的のレストランまで、山道が続く。しかし、義樹はしゃべりながらグイグイと運転している。
結果、山道のカーブにグルングルンと振り回された私は、当然のことながら気分が悪くなってしまった。
「着きました!やっぱり最高ですね、軽井沢は」
楽しそうにしている義樹とは対照的に、せっかく楽しみにしていたレストランへ着いても私は車酔いで大変なことになっていた。
「え?大丈夫ですか?どうしました?」
「ちょっと、車酔いしてしまったみたいで…」
「えー。それは大変だ。とりあえず、水飲みましょう」
お店の人がお水を持ってきてくれたり、色々してくれたので少し治ってきた。
「カーブが多かったですもんね…すみません、話に夢中で気が付かなくて」
「いえいえ。お水飲んだら、だいぶ楽になってきましたので。それよりせっかくなので、楽しみましょう!」
義樹も決してワザとではないことはわかっている。私も彼に気を使わせないように、最初は若干無理をしながら食事を開始した。食事自体はとても美味しかったし、中盤から調子もよくなり、楽しめるようになった。
お会計もスムーズに済ましてくれていた義樹。
「どうしますか?帰りにコーヒーでも買って帰りますか」
気も使ってくれるし、いい人だと思う。
でもまた帰りも、あの荒い運転が待っているかと思うと、再び気分が悪くなってきた。
「そうですね。せっかくなので、どこか落ち着いて、コーヒー飲んでから帰りましょう」
結局少しコーヒーを飲んで落ち着いたものの、帰りもすごいスピードの静かな車内で2時間一緒に過ごすことになった。
車の運転は、女性の扱いに似ているとよく言う。
どこまで当てはまるかわからないけれど、一見穏やかな義樹。でも彼の運転を見ている限り「もしかすると、本当は気性が荒いのかな…?」と勘繰ってしまう。仮にも女性が隣に乗っているのに、少し気を使うとかできないのだろうか。
そして何より、音楽もない静かな車内での往復4時間はかなり辛く、今後も一緒にいて盛り上がる未来が思い描けない。
「義樹さん、何から何までありがとうございます。車も出してもらった上、ご馳走にもなってしまって…」
「そんな、もちろんですよ。代わりに、またデートして下さい」
「それはいつでも」
そうは言ったものの、どうにも盛り上がらず…プラス、あの運転を思い出すとだんだんとLINEを返すのも面倒になってしまい、二度のデートで終了となった。
▶【Q】はこちら:2回目のデートは、日帰りドライブ。高級外車で迎えに行った男に女の本音とは
▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
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秋のデートの盲点とは
この記事へのコメント
そう? 普通のドライバーだいたい法定速度ギリまで出してる。
もっと急発進・急加速・急ブレーキ、更に高速での車線変更が危なっかし過ぎてシンプルに怖かった とかの方がしっくりくるけどねぇ。
相変わらず…🙊