カナと楽しそうに談笑する萌香を見ながら、隣でユミが俺に言う。
「萌香ちゃん、めちゃ社交的でいい彼女だねー!あ、彼女じゃなくて婚約者か」
「そうなんだよ。マジでいい子だからよろしくな」
カートに向かって小走りしながら俺は、思わず目尻が下がるのを感じた。
そう、萌香は最高の婚約者だ。
とくにここ最近は、前にも増していっそう。
◆
「お疲れ様、大丈夫?気つかって疲れなかった?」
帰りの車でそう尋ねる俺に、萌香はハイテンションで答える。
「全然!みんないい人だったから楽しかったよ。カナさんは、今日後ろの組にいたタケシさんの彼女さんなんだよね?結婚はしてないの?ユミさんは?」
「あ〜。カナとタケシも長いのに、そういえば結婚しないな。なんでだろ。
ユミは独身だよ。彼氏も今はいないんじゃないかな、春に飲んだ時はいないって言ってた」
「そっかぁ、綺麗なのに。じゃあ、組は違ったけどルリさんは?」
「ルリは既婚。2年くらい前に会社の人と結婚して、子どもはいない。実は昔はケンジと付き合ってたんだけどね」
「ケンジさんって…あ、あの、おかわりにカレー頼んでた大きい人か!目ウルウルさせながら『正輝をよろしくなー』って言われたよ」
「そうなの?なんか、あいつに言われると腹立つな」
萌香が、俺の大事な友達たちと積極的に仲良くなろうとしてくれるなんて…正直に言えば、まったくもって予想していないことだった。
― 結婚したら、俺が友達と会うことくらいはゆるしてほしいな。
密かにそう思っていただけなのに、ゴルフ中にカナが言っていた通り、最近の萌香は妙に社交的だ。
このゴルフ会への参加も、萌香の方から「私も絶対に参加したい」と熱望されてのことだった。
萌香に一体、どんな心境の変化があったのかはわからない。わからないけれど…。
もしも萌香が無理しているのでなく、心から俺の友達との交流を楽しんでくれているのなら、こんなに嬉しいことはない。
萌香を幸せにすると心に誓ったけれど、本音は、それと同じくらい友達も大切にしたいと思っていたから。
俺の周囲はカナのパターンみたいに、仲間の集まりに彼女を連れてきて打ち解けるパターンが多くて、実は密かに憧れていたところもある。
結婚が決まったことで、もし萌香が本当に俺の友達ごと受け入れてくれるつもりなら…この変化は最高に嬉しいものなのだった。
プロポーズも顔合わせも順調に済ませ、結婚式の準備は着々と進んでいると思う。11月の末にはおおよその招待客を決め、式場も確保した。
ユミもカナも含め、タケシもルリもケンジも、他のカートに振り分けられていたサークルのみんなも、結婚式にはもれなくみんな出席してくれる予定だ。
今日のゴルフに来られていないメンバーは、だいたいが子持ちだ。俺も子どもが生まれたら、ゴルフとは別に集まって子ども同士で遊ばせたりするのも楽しいだろう。
これまでは顔も出していなかったけど、キャンプやBBQ、旅行なんかの既婚勢がメインの家族ぐるみの行事にも、萌香と一緒に参加できるようになるかもしれない。
そんな未来を萌香が一緒に歩いてくれるかもしれないと思うと、なんて最高のパートナーを見つけられたんだろうと、まるで夢を見ているような気分だった。







この記事へのコメント
読者からすると、莉乃からビールを分けてもらう事に違和感を覚える。