「別居したい!」。夫の転勤で地方に移り住んだ夫婦に訪れた、結婚3年目の危機

刺激のない日々を送っていると、目が小さくなる!?


夫・亮介の高松転勤に伴い、皐月は仕事を辞めている。

「本当は辞めたくありませんでしたが、高松でできる仕事ではないので…仕方ありません」

そう言って、皐月は諦めたように小さくため息を吐いた。

「私は、都内の女子大を卒業したあと、もともと某子供服メーカーに就職しました。営業職で4年ほど勤務したあとに、26歳のときに退職しています」

というのも、ちょうど亮介からプロポーズされたのと時を同じくして、中高時代の同級生が立ち上げたアパレルでPRをしてくれないかと誘われたらしい。

「亮介と結婚が決まったこともあり、思い切って会社を辞め、友人を手伝うことにしたんです。PRという職業は未経験でしたが、学生時代に読者モデルをかじっていたこともあり、女性ファッション関係のメディアには一定のツテがあります。

個人のInstagramもフォロワーが20Kほどいたから、そこで毎日コーディネートをアップしたり、影響力のあるインフルエンサーやモデルの子たちと仲良くなって展示会に来てもらったり。華やかで、やりがいのある楽しい仕事でした」

そんな風に語る皐月の表情は、これまでとは一転、生き生きとしている。彼女がアパレルPRの仕事にやりがいをもち、楽しんでいたことがひしひしと伝わった。

「人って、当たり前にそばにあるうちは、その価値に気づかないものですよね…。自分のいた環境がいかに華やかで刺激に満ちていたか。高松に引っ越して来て、そのことを思い知った気がします」

東京生まれ・東京育ちに皐月には、当然ながら高松に知り合いなどいない。

「引っ越しの片付けや新生活の準備に追われているうちは、まだ良かったんです。でも、それも落ち着いてしまうと暇になって、時間を持て余して。そんなとき、日中、手持ち無沙汰についつい見てしまうのは、東京の友人たちが投稿しているInstagramの写真たちなんですよね」

そこには、六本木や表参道のクリスマスイルミネーションや、新たに誕生した渋谷スクランブルスクエアの展望台・SHIBUYA SKYからの絶景、あるいは着飾った男女で盛り上がる某レストランのレセプションの様子なんかが続々と投稿されている。

「ほんの少し前までは、私だって同じ空間に存在していたのに」

しかし今は、遠く離れた高松のマンションの一室で、キラキラ眩しい友人たちをスマホ越しに眺めるだけ…。

「その時、思い出したんです。誰だったかは忘れてしまいましたが、ある年上のお姉さんに言われた言葉を」

−刺激のない日々を送っていると、目がどんどん小さくなっちゃうわよ−

当時は「なんですか、それ(笑)」と笑い飛ばしていた皐月だったが、高松で思い出したそのセリフは、彼女の心を鋭く抉った。

「慌てて鏡を覗いたら、実際、もうすでに目が小さくなってしまった気がしちゃって。このまま田舎にいたら私、刺激から離れて、センスも鈍くなっていっちゃうんじゃないかって…焦りとか怯えとか、いろんな感情に押しつぶされそうでした」

こうして見知らぬ土地で孤独を募らせた皐月は、日に日に元気を失ってしまったという。

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