「悠々自適生活のはずだったのに…」12歳年上の開業医と結婚した女の誤算とは

そこは狭くて古いビルの地下駐車場で、見慣れた国産車や営業車風の車などが左右に10台ほど並んでいた。

期待外れな表情を隠しきれないでいると、金属製のシャッターが軋みながら動き出す音がした。この駐車場の奥にはもう1枚シャッターがあったのだ。

「す、すごい…!」

視界に飛び込んできた車は1台ではなかった。そこには赤や黄色、青など目の覚めるような色とりどりのスーパーカー達が複数台、燦然とした光をまとい並んでいた。

総額数億円の車を持つ、男の生態とは


フェラーリにランボルギーニ、マセラティ、アストンマーチン、NSX。一番奥にはボディカバーが掛けられた不思議な形の車もある。まるでスーパーカーの見本市のようだ。

「男の人は、みんな子供のような顔になっちゃうのね。不思議だわ」

ボディカバーが掛けられていた車は、ブガッティヴェイロンという2億程するメガスーパーカーであった。

スーパーカーが1台だと思っていたので、まさに開いた口が塞がらないような状態になってしまった。ガレージの場所を特定されたくないのは当然だ。

これだけでのスーパーカーを買えるご主人は、いったい何の仕事をしているのだろうか?

「主人は、複数の医院とハイクラス向けの高齢者用住宅や介護付有料老人ホームなどの運営をしています。彼は、医師というより事業家向きだったようです」

医院の開業当初は、このビルにテナントとして入っていたそうだが、現在は自分達の持ちビルだという。

「意外に思われるかもしれませんが、本人は至って真面目で地味なタイプなんですよ。原色を選ぶのは車だけです。車以外の趣味や遊びも特になく、仕事が終わればそのまま家に帰ってきます」

ふふふ、と嬉しそうに笑う彼女から、ご主人との仲の良さが垣間見えた。

聡美の実家は都内にビルを構える大型税理事務所で、彼女自身も税理士との事。彼女が見習い期間だった頃にサブで担当していたのが、今のご主人の医院だったという。

「主人は一回り年上でしたが、一緒に新たな事業展開に挑戦しているうちに、お互いに惹かれていったという感じです。今は、夫の専属税理士と事業パートナーとして共に仕事をしています。これらの車を見たらどんな生活をしているのだろう、って思いますでしょう?同じように複数台の車を集めている友達には、ヘリで美味しいものを気軽に食べに行ったり、世界中を旅したりする方もいらっしゃいます」

そう話す聡美の表情に暗い影が落ち、しばし沈黙が流れた。

「でも私達はそうではありません。普段の生活は仕事に追われる日々で、これらの車も、実はもう半年以上は動かしていません」

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