2019.09.05
デート相手に言われた、痛烈な一言とは
その事件は、綾さんが27歳のデート中に起きたという。
当時デートしていた相手は、大手渉外法律事務所で弁護士をしている男性。彼は、ニューヨーク州の弁護士資格も持つエリートで33歳だった。
「友人の紹介で知り合った彼は美食家で、毎回素敵なレストランに連れて行ってくれました。そろそろ付き合うかなって思っていた3回目のデートで、事件は起きました」
場所は、有名なフレンチレストラン。彼がシャンパンをオーダーし、「乾杯」をした直後のことだった。
こんな素敵なレストランでデートだなんて、「そろそろ告白?」と高揚感でいっぱいだった時に、彼は小声でこう囁いてきたのだ。
「綾ちゃん、乾杯の時はグラスをぶつけないんだよ。こういうお店では」
思わずグラスとグラスをカチンとぶつけてしまった綾さんに、諭すように彼が言ってきた。その瞬間、「やっちゃったな」と思ったとのこと。
「さすがに私も聞いたことがありましたよ。フォーマルな場では、ワイングラスを合わせちゃいけないってことくらい。でもついつい癖でやってしまったんです」
「気をつけるね」と言って、気を取り直して楽しく会話することに集中した。しかし、その後さらに恥ずかしい思いをすることに。
コースが進み、肉料理に合わせて彼が赤ワインをチョイスした。すごく良いワインをチョイスしてくれたのはわかったが、正直ワインに全く詳しくなかった綾さんは、その価値もさっぱりわからなかったとのこと。
「彼にワインどう?と聞かれたから。飲みやすくて美味しい、って答えたときに彼の顔が引きつったんです。『本当はね、飲みやすいって褒め言葉じゃないんだよ。あまり使わない方がいいよ』って」
「またやっちゃった」と思う一方で、マナーばかり気にしていたら食事が美味しくなくなるじゃない、と反発する気持ちもあったという。
「でもよく考えたら、彼が気になるってことは今までデートしてきた人も言わなかっただけで、内心同じことを思っていたのかもしれなって。一流レストランに行くなら最低限のマナーくらい知っておくことが、大人の女性として当然なのかもしれないとも思ったんですよね」
20代前半までは恵まれた美貌と男性ウケするファッション、また「さしすせそ」を駆使し聞き役に徹することなど、簡単なテクニックで男性からちやほやされてきた。その気になれば、どの男性でも落とす自信もあったという。
しかし20代後半くらいから、今までと同じ方法が通用しなくなってきているのを感じていたとのこと。
「表面的なテクニックが可愛いのって20代前半までなんですよね、きっと。年齢を重ねると、私みたいに中身が伴っていなかった女性は、痛い女として見られるんでしょう。20代後半に入って、恋愛が思うようにいかないなってちょうど感じていた頃だったんです」
その日から綾さんは、マナー本を買って一通り勉強をしたそう。フレンチだけではなく、日本食や冠婚葬祭のマナーを学んだ。知識が増えると、自分の今までの行動が恥ずかしく思えたという。
「マナーは本やネットである程度勉強したのですが、ワインの種類や味は全然覚えられなくって。レストランとかでソムリエと話しても恥ずかしくないように、基礎だけでも学びたいなって思い始めました。もちろん、素敵な出会いがあるといいな、っていう打算もありましたけどね(笑)」
そして、当時の婚活仲間を誘い一緒にワインスクールの門をくぐることになった。
「その弁護士の彼ですか?もちろんそのあと連絡なかったですよ。私のマナー違反が原因で、一気に冷めたんだと思います」
あっけらかんと笑いながら、綾さんは当時の話をする。
彼が一流かはさておき、海外経験もあるような一流の男を捕まえるには自分もそれなりに振舞う必要がある。当時の経験から、そう感じたという。
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