彼氏に毎晩マッサージ…?男に服従してばかりの30歳女の、恐るべき逆襲とは

「でも...。そうやって色んなことを学べる機会って、大切だと思いません?結局は自分のためになるし、やっぱり好きな人の期待に応えるのは幸せだし」

驚くべきことに、まりえは男の家来に成り下がったことを特に後悔も悲観もしていないのだ。

“ドM”の真髄とは、底抜けにポジティブであることなのかも知れない。

「過去の元彼も、同じような人が多かったです。その前の彼も経営者だったんですけど“会社の決算書くらい読めるようになれ”って怒られて簿記の勉強もしたし、学生時代の彼には一緒にツーリングしたいって言われて二輪免許も取得しました」

もはや、家来というより“芸達者”である。

「友人からは、もっとまりえを幸せにしてくれる人と付き合った方がいいよって、よく男性を紹介されるんですけど...。優しくて甘やかしてくれる人じゃ、自分が成長できないじゃないですか。物足りなくて、好きになれないんですよね」

話を聞く限り、まりえの理論には説得力がなくもない。

しかしそれならば、どうしてそんな元彼と1年足らずで別れが訪れたのか気になるところだ。

「あ、別れを切り出したのは私からです。...そういえば、過去の元彼もみんな私からサヨナラしてるかも」

“家来化”が進むうちに男に飽きられるパターンかと思いきや、意外にもそうではないらしい。

「尽くすのは良いんですけど、だんだん当たり前になるのが嫌なんです。謙太郎と別れたときは、彼のお部屋を掃除中で空気の入れ替えをしてたんですけど、帰宅した彼に“エアコンが付いてないから部屋が暑い”って怒られて...」

まりえは「ごめんね、少し待ってね」となぜか謝罪したそうだが、彼女の従順さに胡坐をかいていた謙太郎の機嫌は直らなかった。

「そのとき彼、“お前は何のためにいるんだよ”って言ったんです。その瞬間、気持ちがスーッと冷めちゃって。お掃除終えて、エアコンのスイッチ入れて、“帰ります”って部屋を出て、その後お別れのLINEして終わりです」

淡々と語るまりえだが、もちろん彼は後に謝罪し、当然ながら復縁を迫ったそうだ。

「でも、その時はもう遅いんです。だって、もう恋愛感情は冷めてますから。そこまで空気が読めない男だったんだから、仕方ないですよねぇ...」

けれど男女関係とは、ケンカから話し合い、仲直りを経て深まるものではないだろうか。

基本的に男とは、すぐに調子に乗る生き物である。普段それだけ服従されていたら、多少図に乗るのも致し方ない気がする。

そもそも、少しずつ我慢を溜め、限界になったら別れる......を繰り返していたら、結婚になんて辿り着ける気がしない。

「好きな人だったら、もちろんケンカも話し合いも何も苦じゃないですよ。でも、ガラガラって心のシャッターが降りて好きな人じゃなくなったら、もうどうでもいいし。

しつこく引き留められたら気持ち悪くて顔も見たくなくなるし、やっぱり仕方ないですよねぇ...」

まりえはこれまでの甘々なドMエピソードから一転、ゾッとするほど冷ややかな声で言い放つのだった。


―Fin

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo