2019.05.22
元・夫婦 Vol.2かつて愛し合っていた、二人の過去
二人の出会いは、15年以上前に遡る。
美月が進学のために上京した、18歳の春のこと。
美月が入学したのは、武蔵野市にある私立大学だ。いわゆるお坊ちゃまお嬢様学校と言われる校風で、大学には付属の小中高出身者も多い。
内部生たちのきらびやかな明るさ、漂うお金持ちの余裕…付属校出身者はすでにグループになっていることもあり、すべてに圧倒されてなかなか大学になじめずにいた。
そんな中、一人で過ごす一年生の美月を気にかけてくれたのが、当時四年生だった裕一郎だったのだ。ジャズサークルの勧誘をしていた彼に声をかけられたのをきっかけに、少しずつ距離を縮めていった。
意外と努力家で負けず嫌いの裕一郎と、芯が強く正義感に溢れた美月。
二人はあっという間に付き合うようになり、若い恋人同士にありがちな小さなケンカや、楽しい思い出を重ねながら、愛を育んでいった。
裕一郎は日系証券会社で重役をしている父と専業主婦の母を持つ、いわゆる生粋のお坊ちゃまだ。
余裕のある家庭で自由に育てられた次男で、少々甘えん坊の愛され気質。その屈託なさと甘ったれなところは彼の魅力ではあったけれど、美月にとって少々やきもきさせられる部分でもある。
四年生になってもサークル活動に没頭し、結局単位不足で留年。就活も本腰を入れず、美月がはっぱをかけても何かと理由をつけてはフラフラしていた裕一郎。
結局、彼は親のコネで大手商社になんとか入社した。そこは、真正面から就活をしたら中流の私大の一般学生がとても入れるような企業ではない。
“人生イージーモード”
そんな言葉がしっくりくる裕一郎の姿は、美月にカルチャーショックを与えた。けれど、恵まれた環境を最大限に生かすのは間違ったことではない。
これからも彼の人生は、整備された見通しの良い道が永遠に続いていくのだろう。
そんな裕一郎も、社会に出たらさすがに今までのようにはいかない。厳しい実力社会の中で揉まれ、それでも必死に食らいつき、なんとか成果を上げ、大学時代と同様に充実した日々を過ごしていた。
一方の美月も、就活の正念場を迎える。海外の映画や音楽をプロモーションするという夢に向けて、外資の広告代理店に絞り、語学の取得やコネクション作りなど、懸命に動いていた。
しかし、最終的に内定が決まったのは、アメリカの化粧品の輸入販売をする小さな代理店だ。
希望は叶わなかったけれど新卒で入社した後は、がむしゃらに働いた。目の前の仕事に真剣に取り組めば、道はいくらでも拓けていくはずだと信じて。
小さな会社だからこその激務。ただその分、結果は自分の評価に直接つながり、働くことの喜びを知った。
連日、休みなく深夜まで働く日々。翻訳から広報、販売まで業務のすべてをこなす。しかし、やりがいを感じながらも、責任感の重さと蓄積されていく疲労に押しつぶされそうになっていった。
手を抜くということが出来ない美月は、限界をとっくに超えていたのだ。そうして、少しずつじわじわと心が蝕まれていく。気付かない間に、ゆっくりと。
そのことに、自分より先に気づいたのは裕一郎だった。
ある夜、裕一郎は、真剣な顔で美月にこう告げた。
「美月。俺、ニューヨークに赴任することになったよ。
一緒に来て欲しいんだ。結婚しよう」
駐妻は駐妻らしく、夫の帰りを静かに待つのが正解だったのなら、それは価値観が違ったとしか言いようがない。
太陽のような美月には、月のように陰から暖かく見守ってくれる人がいいね。
男女逆で言えば、出産の時に「大事な接待があるんだ。これを失敗したら大事な取引がなくなるかもしれない」なんて言われたら、大きな遺恨が残るでしょ。
バリキャリを傘に自己中してる人には、そこのところ考えて欲しい。
そう言う人なら日本に戻るような気もするから、暮らしぶりや彼女の人となりも次回以降で明らかになると嬉しいです😆
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