「彼が愛しているのは、奥さんじゃなくて私」と言い切る女の歪んだ恋愛観

「騙されてるって思われますか?当時からそんな風に言ってくる友人もいましたね。でもそれは違う。だって彼、週の半分以上を私のマンションで過ごしていました。週末も私と一緒にいた。夫婦関係が破綻していたのは明らかです。ただ…結局離婚しなかったのは、子どものため。ただそれだけ」

これまでずっと涼しい表情だった有沙が、ほんの少し語気を荒げた。傍若無人に振る舞い、彼を傷つける妻に対する怒りを思い出したかのように。

「彼は会うたび私に言っていました。妻に愛なんかない。俺が愛してるのは有沙だけだって。本当は一緒になりたくてたまらない、俺も苦しいんだって。私も同じ気持ちだった」

しかし真に愛し合っていたはずの二人の関係も、5年で終焉を迎えることとなる。

「仕方ないんです、彼がロンドンに海外転勤になって。もちろん単身赴任だって聞いています。妻の方から付いていかないと言ったって。酷い話ですよね。最初のうちは帰国のたびに連絡をくれていたりもしましたが…やはり遠距離は難しいですね」

このような経緯で、5年の不倫関係ののち30歳でフリーとなった有沙。もちろん心機一転、新たな恋を探そうと努力した。しかし…。

「年齢のせいなのか、それとも長年の不倫経験が呼び寄せてしまうのか。声をかけてくるのは既婚者ばかり。当時は私もまだ結婚に夢を見ていたから、わざわざハードルの高い恋を選ぶ気なんてなかったんです」

しかしながら結局、有沙が次に関係を持った男もまた既婚者だった。ちなみにその次も、そして現在も。

「本当なんなんでしょうね。世の中、結婚生活に不満がある男性ばかりで驚きます。彼らは私の前でとても饒舌だけれど、家ではほとんど話さないそうです。妻にはどうせ話しても理解できないんだって」

呆れたように笑う有沙。そしてどこか投げやりに、こう続けた。

「37歳にもなり社会を知って経験値を積んだ今は、いくら家庭に不満があろうが愚痴ろうが、男は離婚しないってわかってます。だけどそれは愛とかじゃなくてもっと現実的な理由。自分の社会的な立場とか財産とかね。そんなもので繋がっている結婚に、もう夢なんか見れないですよ」

…諦めるには早いのでは?

そう言いたくなるが、有沙は現在も日陰の女を続けている。そしてもはやその状況を打開するつもりもないようなのだ。

「そうそう、過去付き合ってきた既婚者たちって共通点があるんです」

再び不敵な笑みを浮かべ、有沙は最後にこんなことを言った。

「皆、奥さんがものすごい美人。しかも気の強そうなワガママそうな女。でも男は結局…最後は癒しを求める。だから私のような女に需要があるんです」

彼女がやっていることを「恋愛」と言っていいのかは疑問が残るが、彼女自身が日陰の女でいることで満たされてしまっている部分があるのかもしれない。

側から見れば「ダメな恋」と思えるが、おそらくは彼女にとってはこれが「普通の恋」になってしまっているのだろう。


▶NEXT:5月14日 火曜更新予定
「私、淋しくって…」捨て犬型女の、ダメ恋報告

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