路地にまかれた打ち水、軒先に置かれた鉢植え……そんな下町情緒溢れる路地を行くと、古式ゆかしい木造家屋がふいに現れる。ビビッドな色ガラスの扉を開き、上り框で靴を脱ぐ。 どこか懐かしい店内に歩を進めれば小さな中庭を囲むようにしてテーブル席、備長炭が煌々と燃え盛る炉。その周囲にはカウンター席が設けられている。 大正時代に建てられた一軒家をモダンに改築した設えに俄然、期待が膨らむ。ゲストの高揚に応えてくれるのは、“肉の総本山”...
路地にまかれた打ち水、軒先に置かれた鉢植え……そんな下町情緒溢れる路地を行った先にふいに現れる木造家屋が『江戸肉割烹 さゝや』だ。 大正時代に建てられた一軒家をモダンに改築したという店内に歩を進めれば、小さな中庭を囲むようにしてテーブル席、備長炭が煌々と燃え盛る炉。その周囲にはカウンター席が設けられている。 ゲストの高揚に応えてくれるのは、“肉の総本山”を名乗る同店ならではの美味の数々。...
食前酒を飲みながら「なんだかお互い、いい歳になったよね」そう言って香織は笑った。 相手は香織より15歳年上の48歳。名前は白鳥健一郎。小さな不動産会社を経営し、新富町に事務所を持っている。 本人からはっきりと聞いたことはないが、千代田区にある大病院の娘を母に持ち、仕事なんてしなくても十分に余裕のある暮らしが送れるほどの財力を持つ家庭に生まれたそうだ。今は彼の従兄弟が4代目の院長を務めているらしいと共...
【1日数組限定】 独占欲は、大切だ。悪しき響きにたじろぐ必要はない。大事な誰か、特別な時間を、自分だけのものにしたい気持ちは、否定のしようがないもの。食事時で、さえ。 完全予約貸切制の店、『日本料理エドア』には、そんな気持ちを抑えられないお客たちが時々、訪れる。予約時間内は誰とも顔を合わせず、自分たちだけで、クローズドな空間と店主・高村直子さんの料理を堪能できる...
「完全貸切予約制」 八丁堀の一角にこの9月開業した『日本料理 エドア』の営業スタイルである。銀座から至近距離にありながら、通勤時間と昼休み以外、人気の少ないこのビジネス街に、ぽつんと開いたこの店は、一見、食器かインテリアのショールームと見紛う。大きな窓越しに見える小柄な店主・高村直子さんの、包丁を握る姿は儚げで、さらにここが何の店か朧気になってくる。 だが改めて言うまでもなく、ここは日本料理店。ホームパーティでお客に料理を振る...
和食×ワインを愉しむならこの店。京都『新山』などで研鑽を積んだ、店主・吉澤定久氏は、実力派として注目される料理人。巧みな食材使いが際立つが、味わいはあくまでも優しく、料理は染み通るような滋味にあふれている。だからこそ繊細な日本ワインが合うと見抜いていたのだ。 レギュラーで揃えているのは勝沼醸造や小布施ワイナリーなど。どちらもワイン造りに独自の哲学を持つひとクセありのワイナリーだ。ゆるぎない信念を持つ料理人ならではのチョイスである。...
店で扱うワインは最初から日本のものと決めていたという。京都で修業した吉澤定久さんは、実力派として注目される若手料理人。巧みな食材使いが際立つが、味わいはあくまでも優しく、料理は染み通るような滋味にあふれている。だからこそ繊細な日本ワインが合うと見抜いていたのだ。 レギュラーで揃えているのは勝沼醸造や小布施ワイナリーなど。どちらもワイン造りに独自の哲学を持つひとクセありのワイナリーだ。ゆるぎない信念を持つ料理人ならではのチョイスである。...
京都『新山』などで研鑽を積んだ、店主・吉澤定久氏。高知県産の魚介に築地の旬野菜を軸にコースを仕立て、自然の風景さえも皿上に再現してみせる。...
「形から入り、形を抜ける」。 古くから日本の芸能、芸事で言われ続けてきたこの言葉は、日本料理にも当てはまるに違いない。高みに自らを置き、先達の仕事をくり返し見て、倣い、技術を身につける。その先にある心得を得るためにまた、くり返す。 今年8月末、昭和通り向こうの銀座の路地裏に『一二岐』を構えた吉澤定久氏は、栃木県出身。寿司屋を営む実家を手伝い、日本料理人となることを夢見た。修業するなら本場でと、19歳で上洛。...
歴史ある金沢の文化をもっと知って欲しい。金沢市が手がけるこちらは、金沢の幅広い工芸品を展示販売するギャラリーと金沢料理のレストランが併設されている。レストランの料理を監修するのは、金沢を代表する料亭『日本料理銭屋』の高木慎一朗氏だ。 金沢の食材と郷土料理をベースに、時代の息吹を取り入れたメニューを提案する。郷土料理の神髄が詰まった一周年記念特別懐石「うめばち」をディナーで味わえる。...
透き通るように美しいイカが運ばれてくるとテーブルから思わず歓声が上がる。有名な呼子のイカを中心にした、名物の「烏賊の活き造り」を始め、佐賀・長崎の肥前地方からやって来る食材をモダンに、あるいは直球勝負で、と自由自在に和食にアレンジして提供する。 さらに良質な伊万里牛を味わうために用意したのは目の前で焼き上げる鉄板カウンターだ。 ここでは、海と山に息づく豊かな九州の食材を、鉄板焼き、創作和食、活き造りという3つのコースで...
銀座・八重洲・新宿・赤坂など都心に全10店舗を展開している『日本料理店 個室会席 北大路』。創業90年の歴史の中で『北大路 京橋茶寮』は、日・祝日営業に初挑戦する店舗となる。 さらに、京橋という立地から、外国人観光客も多く、そのニーズに応えられるような体制もバッチリ。本格的な四季折々の日本料理で、ゲストを心からおもてなししてくれる。 もちろん、完全個室のおもてなしでである!...
香り高い磨き胡麻をゆっくりと芯まで煎り、吉野葛と合わせてじっくり練りこみ、中までトロトロになるように焼き上げている。 銀座を代表する和食店の名物が、湯煎するだけで自宅でも手軽に味わえるのは嬉しい限りだ。3個箱入り¥1,944。...
私たちは、東京にいる限り夢を見ている。 貧しい少女にガラスの靴を差し出す王子様が現れたように、いつかは幸せになれると。 だが必ず、自分が何者でもないと気づかされる時が来る。 神戸から上京し、港区女子へと変貌を遂げる真理亜と、その生き様を見つめる彩乃。 彼女たちが描く理想像は、現実なのか、それとも幻なのか... ずいぶん冷え込むようになった、表参道の並木通り。 私はショーウインドーの前で、かれこれ10...
「裏アカ?それはみんな持ってる物なの?」 「ヤダァ〜剛さん、裏アカ知らないんですか?」 きゃっきゃと笑う真美を見て、素直に知らない、と言うと真美は続けて教えてくれた。 「Instagramの通常アカウントは、誰でも見ることができるし、最近ではビジネスライクな物になっているんです。自分ブランディングの場だから、本当のプライベートは載せられないじゃないですか。」 最近ようやくInstagramの投稿を開始し...
男性から食事に誘われたら、必ずこう答える女がいる。 「メニューによります」 男をレストラン偏差値で査定する、高飛車美女ひな子が、中途半端なレストランに赴くことは決してない。 彼女に選ばれし男たちは、高飛車に肥えた彼女の舌を唸らせるべく、東京中の美食をめぐり、試行錯誤を繰り返す。 最近は強気な商社マン・慎太郎との『銀座しのはら』での告白に動揺したが、ひな子は初恋の男・裕太と赴いた『ト...
「ねぇ、僕と付き合ってよ。後悔はさせないから」 慎太郎は、揺るぎない自信を瞳に滲ませながら、まっすぐにひな子を見つめる。 『銀座しのはら』の料理に夢中で、これまでほとんど彼の顔を直視していなかったが、キリっとした眉に少し濃いめの整った顔立ちは、歌舞伎役者を思わせるような鋭さがある。 ―あ...よく見ると、わりとキレイな顔...。 慎太郎はたかが2つ年上のサラリーマンということで、何と...
「あ、ひな子さん、イイ感じの男性がいるの...?」 俊介が遠慮がちに聞く。 「あのね、彼は港区おじ......」 「あら、マッスーとデートだなんて素敵!俊介さん、彼は昔からひな子のことが大好きな知人なの。じゃあ、無理に慎太郎さんとは出かけない方が良さそうね。あっ、私たち、そろそろ行かないと」 慶子はさすが女子アナと言わんばかりのアドリブでその場を取り繕い、瞬く間にひな子の元を去った。 ...
吾郎の大学のOBである誠一は、IT業界のちょっとした有名人だ。 学生時代に起業して成功を収め、今では吾郎も把握できないほど様々な事業に手を伸ばしている。簡単に言えば、30代にして相当の大金持ちだ。 吾郎は何故だか彼に気に入られ、時おり贅沢な食事を奢ってもらっている。 「いやぁ、俺の第二の人生が、とうとう始まったね。爽快だよ」 『銀座しのはら』にて、ツキノワグマ鍋の肉を美味そうに口に放...
都心から何時間もかかる地方の不便な立地でありながら、東京をはじめ、全国各地の食通やプロの料理人たちがこぞって予約する名店が各地に存在する。滋賀県湖南市、最寄り駅から2キロの場所に在った『日本料理しのはら』もそんな一軒だ。 その有名店が、今秋、銀座二丁目に移転を果たした。シンプルな印象の店内だが、天井に栃の木、棚に赤杉、カウンターに檜を贅沢に使用。麻の葉をモチーフにした立体感ある壁も特徴的だ。...
親子3代にわたって宮内庁への出入りを許された老舗。創業は1935年。板長を務める野永喜三夫氏は、京都の名店『露庵 菊乃井』で研鑽を積んだ後、『日本橋 ゆかり』へ戻り3代目に。 伝統的な技術や創業から使い続ける秘伝のタレを大切にする一方、より多くの方に日本料理の真髄を届けたいと新たな試みにも挑戦している。東京で生産される食材を積極的に取り入れているのもそのひとつだ。...
野菜に掛ける情熱と知識量が豊富な店主・矢長謙三氏は、料理人であり、野菜の伝道師とも言える。手を掛けてやり、野菜そのものを活かした11品の料理で構成した、野菜尽くしのコース1本で勝負する。...
「心を潤す野菜料理を提供したい」。そう語るのは、店主の矢長謙三氏だ。氏は元々、日本料理の修得を目指し、名だたる名店で研鑽を積むうち、野菜の匠、杉本青果店のご主人に出会った。魚や肉に頼らずとも、日本料理は成り立つという信念から紡ぎ出されるのは、野菜の魅力満載のコース料理。木肌の風合いを生かした空間には茶道具や古器が飾られ、店主の粋も伝わる。...
『銀座 瀬里奈』がこだわるのは旬の日本料理、なかでも神戸牛しゃぶしゃぶは絶品だ。料理長の古島さんが、その美味さについて「実は肉(筋繊維)の間に入った霜降りが細かく、旨みがぎゅっと凝縮していて力強い味わい。 『ローラン・ペリエ ロゼ』は繊細でありながらも骨格がある。だからこそ肉の味が濃い、このしゃぶしゃぶと相性がいいのです」と教えてくれた。 さらに10種類のスパイスが効いた、ややピリ辛風味の自家製秘伝のゴマダレに浸して食...
ランチを多数用意するのは実力を知っていただくため。何しろ自慢のメニューが多いもので」と店主の水野正樹氏は語る。36歳と若手だが、銀座の老舗で研鑽を積み、都内の料亭では7年間も料理長を務めた実力派だ。 彼の店には平日限定のランチが6種、他に会席のコースが3種もある。米沢牛のヒレ肉炭火焼ステーキや銀鱈の西京焼き定食など数ある名物の中でも、イチオシは平日限定ミニ会席。前菜からデザートまで5品が登場するこの昼膳は、夜の会席同様1品1品が...