「美人精神科医のお嬢さんに、乾杯!」 『尾崎幸隆』からほど近いバー『kaion 701』に場所を移した一行。外の暑さで顔のテカりを増した輝夫は、腹式呼吸を駆使した無駄に良い声で朗々と乾杯の音頭をとった。隣で飲んでいる若い男女の冷ややかな目線など、どこふく風だ。 その明るさ、前向きさには好感を持たずにはいられないが、どこか滑稽でもある。見たことのあるキャラクターだ、なんだっけ… 思い出した、ディズニーに出てくる...
エレナの中での経営者のイメージは、髭を生やしセルフレームの黒メガネをかけ、白いパンツをはいている、といったところだ。少し肉付きがよくて、しかも本人は自身の出たお腹をものともしない。 その点、銀縁の細いメガネをかけた、細身でやや神経質そうな顔つきの忠之は、エレナの好きな「銀行員らしい」オーラを放っていた。 彼が予約してくれたのは麻布十番にある『尾崎幸隆』。カウンター席に腰かけてメニューを見たエレナは、〆の「トリュフと...
女子が喜ぶご馳走なら、「肉」にそして「寿司」かと。そのどちらも同じ店で食べられたら、そりゃテンションが上がるってもの。 こちらの『尾崎幸隆』にはその名の通り、肉は尾崎牛、そしてマグロは築地の名士・やま幸が仕入れる他店には出回らない逸品が集まる。 そんな素材を最大限に生かしたシンプルなメニューは、誰をも虜にするだろう。ここで落とせない女子はいない、自信をもって臨むべし。ありそうでなかった、そんな名店である。...
あれは暑さが残る初秋の夕方だった。新宿にある大手百貨店に新規のシステム導入の最終提案に副社長の大平祐一(58)と共に臨んだ帰り道だった。 「17時か。会社に戻るのも微妙な時間だな。坂本、たまには一杯やってくか」 「そうですね。ぜひ」 おっと、まさかの突然の副社長とのサシでの食事機会。接待というほど堅いものではないが、夕食を共にしてコミュニケーションを円滑にし、仕事を進めやすくする大チャンスだ。 「いくつか...
智美が「そうそう、それ」と言いながら、麻里子のスマホを覗き込んでくる。 小さく音を出すと、イントロの音楽が流れスマホ画面には赤ちゃんが映った。 ちょ...
もし夏バテでも、この店のカッペリーニならするすると入ってしまう。麻布十番で30年近く愛されるイタリアンの名店『クチーナ ヒラタ』。 現在は町田武十(たけじゅう...
約束の日、待ち合わせ場所に指定されたのは麻布十番の『クチーナヒラタ』。 敦子は何度か来たことがある店だったため、久しぶりに会うスタッフに挨拶しな...
今夜のデート先は、お決まりですか? 大好きなあの人の笑顔が見たい!しかし…。 「どこに行ったらいいのだろう?」 「何をしたら喜んでくれる?」...
人間、本当にショックな出来事があると、記憶が飛ぶようだ。 その夜。杏子はふと気づくと、白ワインを片手に、『クチーナ ヒラタ』にて、知樹に熱心に口...
「初回は絶対に外さない、誰もが知っている大定番で攻めます」 まだ相手のことをそこまでよく知らないうちは、何を食べても美味しいことが明確な、定番の...
埼玉県出身のユリ、27歳。大手損害保険会社でエリア総合職として勤務。強い自立心を持った彼女が、彼氏と同棲していた港区を抜け出し、代々木上原という地で、迷い...
「私最近、彼氏ができたんですけど、彼の結婚願望がすごいんですよ。育休とって子育てしたいとか言ってって。今時っぽいですよね(笑)」 そう優子が話出...
昼はプリフィクスコースが4種類、夜はアラカルトを自由に組み合わせて楽しむ気軽なスタイルの『クチーナヒラタ』。 シェフの町田氏は、仕事の厳しさ、調理の...
もし夏バテでも、この店のカッペリーニならするすると入ってしまう。麻布十番で30年近く愛されるイタリアンの名店『クチーナ ヒラタ』。現在は町田武十(たけじゅ...
先代の薫陶を受けた町田武十氏が麻布十番で23年の歴史を誇る名店の味を守る。今回のパスタのように素材の持ち味と食感を活かしつつも一体感ある仕上がりにするため...
新宿の大手百貨店の新システム構築案件を受注し、先方の社長への御礼会食も実施した。これからチームを組成してプロジェクトに入る。私は全体を統轄する事業部長とし...
陽子が愚痴りたそうだったので、2人で軽く夕飯を食べて帰ることにし、『オルソ』に立ち寄った。 「私もすでに結婚している友達何人かいますけど、あそこまで露骨に...
仕事が終わり、麗子に指定された麻布十番の『オルソ』に向かった。この店は地下にワインセラーが併設されており、ワイン好きな麗子とたまに来る店だ。...
新宿の名店『オステリア ヴィンチェロ』の齋藤シェフの監修のもと、南イタリアのマンマの味を予算6,000円から気軽に楽しめる穴場的な店。フードメニューは勿論...
暮れかけた夕日を背に、昨日のコンサート成功も兼ねて乾杯する二人。仕事終わりの夏のビールは、どうしてこんなに美味いのだ。 ◆ 「で?どうなのよ阿部さん...
今回、美紗子ちゃんのリクエストにぴったりと叶った店がここ、『エル ブランシュ』。 雰囲気は、パリ16区のブローニュの森のそばに立つアパルトマンの一室、そんな静...
小川智寛シェフはかつて、フランス各地で3年間の修業を積んだ実力派。特に素材にはこだわり、野菜はシェフの故郷・福井の契約農家から届く無農薬野菜が主。魚、肉も...
いまや、世界中で関心を集める和食。そのエッセンスは、料理、お酒、お皿、そして精神にも表れる。多様化する和食の新たなプレゼンテーションに迫る。...
「それでは...かんぱ〜い!」 男女6名の声が『Cast78』の店内に響き渡る。 —シャトー・マルゴー1985年... ルナが生まれた年より3歳若い1985年は、グレートヴィンテージである。“高貴なるボルドーの女王”が放つ、丸みがありながらもシルクのような滑らかさを、噛み締めるようにゆっくりと味わった。 今日の食事会のメンツは、30歳前後のIT起業家の男性たちと、26~28歳くらいの女性たちである。 ...
亮介は先日、麻布十番の『Cast78』で里緒と食事をした。 友人と一緒にいたという恵は、亮介達の帰りを偶然見かけたらしい。いつも思うが、港区は予想以上に狭い。 「すごくお似合いだったので、友だちと2人して目を奪われちゃったんです。ただ……。」 そして恵は、すごく言いにくそうに、綺麗にカールした睫毛を伏せた。 「一緒にいた友人がどうもあの女性のことを知っているようで…。亮介さん、あの美人さんには気をつけて下さい...
仮氏3:直斗 年齢:29歳 職業:俳優 推定年収:500万円 住まい:代々木のアパート 「顔も身体も断トツ1位は直斗で、一緒に歩いてて自慢。けど年収が結婚相手としては全然足りない。行くお店も『Cast78』『鉄板バンビーナ』とか。時間が空いて寂しい時に電話して会う要員。もっと稼いだらもっと真剣に考えるかも。」 それぞれに不足している箇所を他の誰かが埋めてくれるから、余裕を持って婚活に励めると...
暗証番号を入力して重厚な扉を開くと、そこは、プライベートなワインバー『Cast78』。本日、江幡哲也さんが社員のためにリザーブしたのは、ガラス張りのルームバルコニーだ。200以上の銘柄がずらりと並ぶワインリストの中から1本を選び、パテ・ド・カンパーニュを肴にまずは乾杯。この日は女性社員が中心ということで、話題は自ずと“恋バナ”に。 「男性社員と食事に行く場合は、仕事かゴルフの話。彼女たちとの場合は恋愛の話が多...
はい、もちろんお菓子の名前ではありません。フランス・アルザス地方発祥の煮込み料理のこと。 ザウアークラウトと同様の意味で使われることもあるが、料理としてはザウアークラウトをソーセージやベーコン、豚のすね肉などとともに煮て、ゆでたジャガイモをつけ合わせた、フランス東部アルザス地方の料理。 ビールがとまらなくなること請け合いの逸品である。...
5年間、パリの星付きレストランで修業をした須藤亮祐シェフのビストロ料理が味わえる。 肉々しい郷土料理をはじめ、扱いにくい内臓系も「丁寧」が身上。魚や野菜もいいがパワーと緻密さが同居する肉料理でコースを楽しもう。...
「ここ、私のモデルのお友達がみんな通ってるんですよね。」 2回目に来店し、麗子を指名したカナは自分の友達だと言って、今活躍中のモデルやタレントなど、この店に通ってくれている客の名前を挙げた。 大半は麗子が担当している客だが、彼らからカナの話が出たことは一度もない。 どうやらカナの、一方的な片思いのようだ。 カナは、「モデルのみんなと同じ」セラピスト・麗子の元に通っていることで、自分も...
熾烈を極める東京婚活市場。 その中で「結婚したいのに結婚できない」と嘆く女には、いくつかの共通点がある。 ある行動により自分の市場価値を無駄に下げる女、逆に実態なく価値を上げ過ぎて機会損失している女……。 これまで、24時の誘いに乗る女、〆のラーメンに行く女、花嫁修業する女、港区女子、2番手の女、理想は父親、イケメン好き、などの事例を紹介してきた。 今回は、とにかくいつ会っても完璧、な結...
生粋のパリジャンであるフローラン・ダバディ氏が足繁く通う麻布十番の『ビストロコティディアン』。 須藤亮祐シェフが作る骨太なビストロ料理のなかでも、とくに豚肉を使ったメニューがお気に入りで、「フロマージュ・ド・テット ラビゴットソース(豚の頭のカリカリ焼き)」は、あれば必ずオーダーするのだとか。...
『ビストロ・コティディアン』で供されるのは、ビストロ料理に間違いないが、クオリティは高級店に匹敵すると言っていいだろう。須藤亮祐シェフは5年間、パリの星付きレストランで修業をした人物。「ビストロの醍醐味を味わってもらいたいので、素材そのものをシンプルに、素直に『旨い!』と思えるものを安く食べてもらいたいと思っていますが、プロセスはグランメゾンでやることと変わりませんね(笑)」。 肉々しい郷土料理をはじめ、扱い...
フランス各地の定番郷土料理を、そのままのスタイルで提供するビストロ。フランスの星付きレストランを渡り歩いた須藤亮祐シェフの技が活きている。...
恵比寿『ル・ビストロ』で須藤亮祐氏がシェフを務めた当時、別のフレンチで働く北野勝也氏は、その味に心惹かれ足繁く通った。 その後、須藤氏が自店を開くにあたり、縁あってふたりは共に働くことに。それが現店である。 須藤氏はガストロノミーに憧れて渡仏するも、パリの日常に溶け込み、愛されるビストロを体感して、自身の方向性を決めた。 「長い日々を経て残る定番には、それだけの理由と意味がある」と須藤氏。フランス各地の定...
店名の『ル ポトローズ』は“秘めごと”や“ずっと胸に描いていた夢”をあらわす仏語。フランス料理ひと筋の本間寛シェフが、2011年にオープンさせたこの店のテーマは“日常的に通えるフレンチ”だ。 ベーシックでクラシカルな料理がシェフの持ち味だが「日本人であるというアイデンティティがあるからこそ和食材も使う」と言う。 多くのレストランには“特等席”が存在するが、この店では、カーテンで仕切られて半個室となる厨房横のテーブル席が...
麻布十番商店街の西端にあるフレンチレストラン。ひとりでも、デートでもと、使い勝手の良さが魅力。 夜景を望む絶好のロケーションで、フレンチ一筋のベテラン本間シェフが手がけるクラシックなフレンチを味わおう。...
誰かの“マイレストランでありたい”。この店にはそんな気持ちが流れている。「お客さんはもっとわがままで良い」と語る本間寛シェフ。要望を伝えれば、ワインのセレクトや料理の取り分けなど、2人の空間が一層盛り上がるよう絶妙なサポートをしてくれる。 その際は、是非六本木ヒルズの夜景が望める窓際の特等席を。空間、サービス、そして料理。上等であり、心安らぐ。初デートの場として後に語り継ぐのであれば、こんな店が望ましい。...
麻布十番商店街の西端にあるフレンチレストラン。ひとりでも、デートでもと、使い勝手の良さが魅力。 夜景を望む絶好のロケーションで、フレンチ一筋のベテラン本間シェフが手がけるクラシックなフレンチを味わおう。 月曜からこんな店で美味しいものが味わえたら、贅沢な気分で1週間をスタートできるはずだ。...
店名の『ル ポトローズ』は“秘めごと”や“ずっと胸に描いていた夢”をあらわす仏語。フランス料理ひと筋の本間寛シェフが、2011年、麻布十番にオープンさせたこの店のテーマは“日常的に通えるフレンチ”だ。 ベーシックでクラシカルな料理がシェフの持ち味だが「日本人であるというアイデンティティがあるからこそ和食材も使う」と言う。 多くのレストランには“特等席”が存在するが、この店では、カーテンで仕切られて半...
『トロワグロ』をはじめ、フランスの名だたるレストランで研鑽を積んだ武田健志シェフ。 「表現はあくまで自由でありたい」と語る氏。日本各地から届けられる旬の味を用い“武田流”と評される独創的なフレンチを作り上げる。...
翌朝起きると早速、河村からLINEが入っていた。 「おはようございます。昨夜は突然すみませんでした。良かったら今度お食事に行きませんか?」 河村とは、先週同僚の優香と行ったバルで知り合った。席が空くまでの間、相席になり10分程度話しただけに過ぎないが、麗子が店を出る間際、わざわざ追いかけて連絡先を教えてほしいと言ってきたのだ。 ストレートな誘い文句は、河村の人柄を表しているようだ。河村は色気をふりまき、女を惹...
夜には真っ暗になってしまう裏路地のビルの2階。この店のカウンターには、男性も女性もひとりで晩酌する姿がよく似合う。 「いぶりがっこポテサラ」「真鯛の玉子とじ」などそそられる小鉢メニューはリーズナブルに提供。 看板料理の「炊き込みいか飯」は、丸ごと揚げたいかを土鍋で炊いた逸品。蓋を開け、いかをカットすると中からとろりと肝が出て、身やご飯に絡まり合う。〆のはずが、その光景に再び酒が進んでしまう。...
「香奈ちゃん、男関係激しいらしいよ?噂じゃ友だちの彼氏でも不倫でも、手段を選ばないらしい。仕事も見た目もちゃんとしているから、皆騙されるらしいけど。」 初め、亮介は片瀬が誰のことを言っているのか分からなかった。しかし、香奈に対して何となく引っかかっていたことを思い出した。 「本当にあの香奈ちゃんが?人違いじゃなくて・・・?」 「どうやらそうらしいんだ。パーティーに来ていた2、3人の女の子が香奈ちゃんのことを、一部...
涼子と誠は、カウンター席に並んで座った。 ひとまずビールで乾杯し、当たり障りのない会話で場を繋ぐ。涼子は必死に誠との距離を推し量っているのだが、彼はそんな涼子の駆け引きなど素知らぬ顔だ。 ―一体どういうつもりなんだろう? 麻美は涼子を彼女候補、として紹介しているはずだが、彼からは初対面の女性に対する遠慮や気遣いを一切感じない。涼子の存在は空気か何かのように、誠はただ気ままに食事を楽しんでい...