冬の美食の最高峰と言えば日本料理に他ならない。 カニ、ふぐ、ぶり、白子……真冬の最上の味覚を思い描けばフレンチを筆頭とする洋食よりもだんぜん日本料理に軍配が上がるはず。もうそれは絶対的な大人の常識とさえいえる。...
入籍を間近に控えたある日、私は衝撃的な話を健人から聞かされたのだ。 「あの人、私の目を見て言ったのよ。“ミホとは結婚できない”って。しかもね、浮気相手の女は妊娠までしてるんだって。思わず婚約指輪投げつけちゃった…。」 『銀座 よし澤』のカウンターで、次々運ばれる料理を口に運びながら、つい先日の悲惨な出来事を一つ一つ噛みしめるように思い出していた。 入籍を予定していた、私の32歳の誕生日。たった一人で過ごすには辛す...
階段の途中に鎮座する鍾馗様に導かれるまま、下へ向かうと飛石に砂利、蹲の設え。一枚板の美しい檜のカウンターに腰を落ち着ければ、何とも贅沢。ランチとは思えない健やかで落ち着いた心持ちになる。 国内外で高い評価を集める『ぎんざ 一二岐』。店主である吉澤定久氏は長く京都で研鑽を積んだ気鋭の料理人。自身の名を冠した、この店を新たに開いたのは一昨年末のことで、以来、ランチも夜と同等の懐石料理を供してきた。 それ...
路地にまかれた打ち水、軒先に置かれた鉢植え……そんな下町情緒溢れる路地を行くと、古式ゆかしい木造家屋がふいに現れる。ビビッドな色ガラスの扉を開き、上り框で靴を脱ぐ。 どこか懐かしい店内に歩を進めれば小さな中庭を囲むようにしてテーブル席、備長炭が煌々と燃え盛る炉。その周囲にはカウンター席が設けられている。 大正時代に建てられた一軒家をモダンに改築した設えに俄然、期待が膨らむ。ゲストの高揚に応えてくれるのは、“肉の総本山”...
路地にまかれた打ち水、軒先に置かれた鉢植え……そんな下町情緒溢れる路地を行った先にふいに現れる木造家屋が『江戸肉割烹 さゝや』だ。 大正時代に建てられた一軒家をモダンに改築したという店内に歩を進めれば、小さな中庭を囲むようにしてテーブル席、備長炭が煌々と燃え盛る炉。その周囲にはカウンター席が設けられている。 ゲストの高揚に応えてくれるのは、“肉の総本山”を名乗る同店ならではの美味の数々。...
食前酒を飲みながら「なんだかお互い、いい歳になったよね」そう言って香織は笑った。 相手は香織より15歳年上の48歳。名前は白鳥健一郎。小さな不動産会社を経営し、新富町に事務所を持っている。 本人からはっきりと聞いたことはないが、千代田区にある大病院の娘を母に持ち、仕事なんてしなくても十分に余裕のある暮らしが送れるほどの財力を持つ家庭に生まれたそうだ。今は彼の従兄弟が4代目の院長を務めているらしいと共...
本店となるのは上越で120年続く老舗料亭『やすね』。海、山、たんぼに豊かな食材を誇る新潟の味を、こちらでは老舗料亭のエッセンスを取り入れつつカジュアルに味わえる。...
本店となるのは上越で120年続く老舗料亭『やすね』。海、山、たんぼに豊かな食材を誇る新潟の味を、こちらでは老舗料亭のエッセンスを取り入れつつカジュアルに味わえる。 鮮やかな赤い色が南蛮(赤唐辛子)に似ていることから「南蛮海老」と呼ばれる甘海老を始め、新鮮な海の幸、ブランド肉、郷土の文化を受け継ぐ珍味などが勢ぞろい。 さらには「かんずり」や塩糀などの発酵調味料がその食材を豊かに引き立てる。雪深い地方ならではの保存食や冬の...
2015年6月オープン。利き酒師の資格を持つ女将が厳選した35種以上の日本酒のラインナップが自慢で、料理や客の好みに合わせて提案してくれる。 料理は毛ガニをはじめ、女将の出身地・函館から直送される海の幸などをふんだんに使用。コースは6,000円、8,000円、10,000円から選べる。女将は元ツアーコンダクターという接客のプロ。英語も堪能で外国人をもてなすのにも最適である。...
銀座のベルビアという商業施設にありながら、本格的な和食が楽しめる『銀座KAN』。 何より、あの『並木橋 なかむら』の姉妹店であるから、その実力は折り紙付きだ。 オープンキッチンで奥行も十分の広々としたカウンターに座り、躍動する3人の料理人を眺めているだけで、張り詰めた心は自然とフラットになる。オープンキッチンで奥行1m弱もある広いカウンターが特等席。 溌剌としたサービスに、強ばった体はほぐれ、傾ける一献で日頃の責...
銀座のベルビアという商業施設にありながら、本格的な和食が楽しめる『銀座KAN』。何より、あの『並木橋 なかむら』の姉妹店であるから、その実力は折り紙付きだ。 オープンキッチンで奥行も十分の広々としたカウンターに座り、躍動する3人の料理人を眺めているだけで、張り詰めた心は自然とフラットになる。オープンキッチンで奥行1m弱もある広いカウンターが特等席。 溌剌としたサービスに、強ばった体はほぐれ、傾ける一献で日頃の責務から完...
銀座一丁目、プランタン銀座裏の銀座ベルビア館の7階という一等地にありながら、しっぽり和食が楽しめる店がある。『並木橋なかむら』や『味のなかむら』などの人気店の系列の『銀座 KAN (ぎんざ かん)』。 ライブ感あるオープンキッチン前には橡の木の大きなカウンターが構え、凛とした雰囲気の中季節の山海の味覚を楽しめる和食店。デートでは料理人との会話を楽しめるカウンターが圧倒的な人気席であり、つい時間を忘れてしま...
仕事を通じて知り合った由美は、月に数回のペースで会う相手だ。飾らない性格で、まだ恋人ではないが一緒にいると心が休まる。今まで派手に遊んできた自分も、そろそろ由美のような女性と落ち着きたいものだと、会う度に思う。 その由美が、「結婚を考えていた彼と別れることになった」と泣きながら電話をかけてきたのは、昨夜遅くのことだった。慰めつつも「彼女を振り向かせるなら、今しかない」と火が点いた。 次の日は早めに仕...
店主の赤井雄一さんがひとりで切り盛りするカウンター割烹。高級食材に頼らず、「家庭でも食べられる材料を使って、家庭じゃ作れない料理を提案する」と話す赤井さん。 先付や強肴どれをとっても、ひと皿ごとにさりげない技術が光る丁寧な和食をいただける。名物の炙り穴子を目当てにふらり立ち寄る常連も多く、女性のひとり客も珍しくない。...
上質な焼肉としゃぶしゃぶの食べ放題で知られる三ノ輪の肉割烹『かがやき』が2015年10月、銀座の路地裏に進出。こちらも本店のシステムを踏襲した完全予約制。 予約時にそれぞれの客の好みを確認したうえで、当日仕入れた食材を使ってその日一番美味しい料理を提案してくれる、オーダーメイドの割烹だ。...
上質な焼肉としゃぶしゃぶの食べ放題で知られる三ノ輪の肉割烹『かがやき』が2015年10月、銀座の路地裏に進出。こちらも本店のシステムを踏襲した完全予約制。 予約時にそれぞれの客の好みを確認したうえで、当日仕入れた食材を使ってその日一番美味しい料理を提案してくれる、オーダーメイドの割烹だ。カウンター10席のみの隠れ家的な雰囲気が魅力の1Fでは肉と魚尽くしのコース料理を。2Fではしゃぶしゃぶと海鮮しゃぶしゃぶ食べ放題も楽しめる。...
上質な焼肉としゃぶしゃぶの食べ放題で知られる三ノ輪の肉割烹『かがやき』が2015年、銀座の路地裏に進出。こちらも本店のシステムを踏襲した完全予約制。 予約時にそれぞれの客の好みを確認したうえで、当日仕入れた食材を使ってその日一番美味しい料理を提案してくれる、オーダーメイドの割烹だ。カウンター10席のみの隠れ家的な雰囲気が魅力の1Fでは肉と魚尽くしのコース料理を。2Fではしゃぶしゃぶと海鮮しゃぶしゃぶ食べ放...
食べ放題、飲み放題で焼きしゃぶが楽しめる三ノ輪の本店。銀座店では料理の内容が変わるが、システムは本店に近い。店は完全予約制で、予約時に客の好みや希望を聞き、当日仕入れた素材で可能な限り客のワガママに応えてメニューを提案する。つまり、日替わりかつ客替わりのスペシャルコースを味わえるということ。一度来店した客に提供した料理はデータに残し、客の嗜好や同じような内容に偏らないように工夫。訪れるたびに新鮮で斬新な料理で舌...
名店を渡り歩き、日本料理界の未来を嘱望される坂内氏。独立に際し選んだのは、銀座。予約は1組限定、夜のコースは¥20,000と¥25,000の2本勝負だ。が、ここで得られる感動を思えば決して高くはない。 戸を開けると、日常を忘れる茶室のような空間が出迎える。料理は、先付けから甘味まで8品。ひとつひとつの食材の持ち味がしっかりと伝わるにも関わらず、口の中で美しい印象をもって融合する。『ランベリー』時代を共にした大塚氏が賞賛する、...
銀座にある一室とは思えぬ静謐さと、美食への期待が膨らむ重厚な店構え。"優雅な隠れ家"。そんな言葉が似合うのが、ここ東家だ。 昼、夜とも1組限定で、さらに「予約時に好みの食材はもちろん、ホストとゲストがそれぞれ何名様なのかなど、打ち合わせをさせていただきます」とは接客担当者の弁。 そして供される、厳選の旬材をふんだんに使った日本料理の数々。そう書くと、肩肘張った懐石のような料理を想像するが、「伝統を守りつつも、自分の味覚に従...
名店を渡り歩き、日本料理界の未来を嘱望される坂内氏。独立に際し選んだのは、銀座。」 予約は1組限定、夜のコースは¥20,000と¥25,000の2本勝負だ。が、ここで得られる感動を思えば決して高くはない。戸を開けると、日常を忘れる茶室のような空間が出迎える。料理は、先付けから甘味まで8品。ひとつひとつの食材の持ち味がしっかりと伝わるにも関わらず、口の中で美しい印象をもって融合する。 『ランベリー』時代を共に...
坂内氏がこのひと皿で表現するのは、日本料理ではまだノウハウの少ない牛肉への"挑戦"。最適な熟成と、塊のまま炭火焼にすることで、繊維質の食感と旨みは最高潮へと導かれる。合わせたのは、松茸とエボダイ。1+1が3になるような、相乗効果で美味を追究。...
走る走る。坂内晃氏、疾風の如く駆けている。目の前には巨大な獲物が。追いつけるか。うーん、追いつけない。敵もさるもの、差は広がるばかりである。ひとりは『小十』奥田透氏。もうひとりは『龍吟』山本征治氏だ。徳島『青柳』時代から、2人の跡をずっと追いかけ続けて来た。 『小十』の立ち上げ直後から、奥田氏の下で働く。「お釈迦様の手の上で遊んでいる感じ」の7年だった。職を辞した後、ひととき、『龍吟』では厨房を見せてもらい、...
–美桜ちゃんから聞いてさ、来てみたんだけど –さゆりママが自腹で通う店って本当? どうやらあの厄介な勘違い女・小倉美桜が、この店についてやたらと言い回っているらしいのだ。 彼女が、さゆりママが経営する7丁目の高級クラブで働き始めて1ヶ月が経とうとしている。 天性の美貌と存在感。人を惹きつける影響力。ポジティブで、良くも悪くも空気を読まないところ。 タカハシは思った。第一印象は最悪だったが、美桜は少しだ...
歌舞伎座の並びにたたずむ一軒。もともとは歌舞伎役者が、白粉を崩さずに食べられるようにと考案されたものだ。 「末広」は、名代焼きいなりをはじめ、特製ゆず、焼き鶏牛蒡、焼き黒豆など、展開する8種類すべてが楽しめる詰め合わせ。¥1,300...
~粋な料理とごはんが旨い和食処~ 下町の風情漂う築地の路地裏。元三味線のお師匠さんの家だった一軒を改装したのが『酒斎 伊とう』。去年8月のオープンだ。「うちは居酒屋以上割烹未満」。そう語るご主人の伊藤卓也氏は、仏や伊など洋食畑を歩んだ後、『新ばし 久』で修業。和食に転向した異色派だ。 コースは5品¥5,000と7品¥6,800の2種類。¥6,800からのコースでは、フライも登場するものの、料理は純粋な和食。土鍋ごはんの...
京都に代々続く名店にはじまり、『くずし割烹 枝魯枝魯』では枝國栄一氏の下、寝る間も惜しんで料理に打ち込んできた。そんな店主・笠嶋伸一郎氏が店を構えたのは、今年3月のこと。 てっきり"くずし"を謳うものと思いきや、武家の礼法にはじまる日本料理の正式な膳立て、本膳料理を銘打つ。めいめいに運ばれる高足膳には複数の小料理が並び、客は一の膳、二の膳と食べ進めていく。本来ならば、配膳の順序や形式に作法はあるものの、そこは自由闊達に、というス...