「みっともないわねぇ」。“授かり婚”に浮かれる32歳を、一瞬で絶望のどん底へ突き落と...
「母さん、俺だよ。」 重たい扉を開きながら、慣れた様子でショーンは奥へと進む。遅れないよう彼に続くが、ふかふかの絨毯を踏みしめる度に緊張で体が震えていた。 —大丈夫、今日は体調も落ち着いているし、ショーンも一緒なんだから。 呪文を唱えるように、何度も“大丈夫”と自分に言い聞かせる。けれど、客間に通される頃には、手土産に持参した『エシレ』のバターサブレが入った紙袋を、強く握りしめるほど緊張していた。 東京タワ...