2010年当時、「ミシュランガイド東京」に焼き鳥店が選出されたのは、革新的な出来事だった。それまで〝庶民の味〞と多くの人が認識していただろう焼き鳥が、世界に誇る和食の一ジャンルとして認められた瞬間だった。 〝つねに良質な料理を提供している焼き鳥の名店〞として選ばれた4軒のうちの1軒が、錦糸町の『とり喜』。店主の坂井康人さんが炭の香りを過剰に纏わせず、丁寧に焼き上げる串が高評価を得た。 下町の名焼き鳥店、否、〝鶏懐石〞を...
「慧」という名前につい感傷的になってしまった自分に苦笑し、あらためて目の前の「ケイ」を見る。子犬のように無邪気な笑顔を浮かべる彼に、言い方は悪いが「扱いやすそうな男」という印象を受けた。 ケイが選んだのは『とり喜』。「ミシュラン星付き」に恥じない上品で落ち着いた雰囲気で、エレナはすっかり気に入った。 ケイは就職した頃船橋の寮に住んでいたので、東京の東エリアに慣れているのだという。「恥ずかしいけど、錦糸町とか小岩あた...
『ミシュランガイド東京』の2010年度版に焼き鳥店が選出されたのは、革新的な出来事だった。それまで“庶民の味”と多くの人が認識していただろう焼き鳥が、世界に誇る和食の一ジャンルとして認められたのだ。 “つねに良質な料理を提供している焼き鳥の名店”として選ばれた4軒のうちの1軒が錦糸町の『とり喜』。店主の坂井康人さんが炭の香りを過剰に纏わせず、丁寧に焼き上げる串が高評価を得た。下町の名焼き鳥店、否、“鶏懐石...
うどんだが驚くのは色。つやつやと輝くが少し茶色い。「滋賀から有機農法の小麦を仕入れ、ドイツ製石臼で自家製粉しています」と店主の永井康太氏。麺には“ふすま”もところどころに。つまりは小麦の“挽きぐるみ”。 食べれば心地よい香り、甘みが口に広がっていく。元蕎麦屋の氏が路線変更したのは1年半前。蕎麦はアレルギーの人も多く、ならばと、蕎麦前ならぬ、うどん前も充実する専門店に。錦糸町移転は今年6月。 「一本道を極める蕎麦と違い、...
ほろ苦い肝のリエットを添えた鮎の焼きリゾットに東一の純米吟醸。初めてなら「え?(だってここはイタリア料理店なのに)」と驚くが、門前仲町『パッソ・ア・パッソ』ではお馴染み。「これは」という料理には日本酒を合わせる。 「日本の素材を日本の水で料理する。合わないわけはないんです」 有馬邦明シェフ自身も、大の日本酒好き。とりわけ、ゆっくり考えごとをしたいときに足が向くのが割烹『深川 志づ香』だという。...
門前仲町の名イタリアン『パッソ・ア・パッソ』の有馬邦明シェフがオススメの店がこちら、割烹『深川 志づ香』。 「大将の料理は、お酒にぴったりと合う。特にこの丸茄子の海老味噌焼は、酒を呼びます」 海老味噌を使ったクリーミーなソースで作る和風グラタン的一皿。表面は香ばしく、中はとろり。柔らかな茄子にも海老味噌の旨みが染みている。合わせて御湖鶴(みこつる)の純米をやれば、満面に笑みが浮かぶ。「うちの店でも扱っている、好きな酒で...
上記の『パッソ・ア・パッソ』の有馬邦明シェフのいきつけがこちら。有馬シェフは大の日本酒好き。とりわけ、ゆっくり考えごとをしたいときに足が向くのが割烹『深川 志づ香』だという。「大将の料理は、お酒にぴったりと合う。特にこの丸茄子の海老味噌焼は、酒を呼びます」 海老味噌を使ったクリーミーなソースで作る和風グラタン的一皿。表面は香ばしく、中はとろり。柔らかな茄子にも海老味噌の旨みが染みている。合わせて御湖鶴(み...
「『両国江戸蕎麦ほそ川』の蕎麦粉をソースベシャメルの技法で炊き上げたそばがき、奥井海生堂蔵囲い2年物昆布のジュレとベルギーキャビア、ウォッカクリーム、おろしたてのワサビのコンビネゾン」である。 「この香り、たまらない...」 口にとろけるキャビアの旨み、そしてそばかきがふわりと香る。この見事な調和具合は、まさに感動の一言だ。...
マニアックというか、特定の地域に特化したタイプのエスニック料理店が多いことは、錦糸町という街の特徴のひとつだが、ここもまた、そんな一軒。恐らく日本で唯一の、中国・湖南料理の専門店だ。 中国八大料理のひとつで、唐辛子を多用し、最も辛い料理があると言われるため、生も乾燥も複数の種類を使い分けているという。また、米粉で作ったビーフン料理がポピュラーなのも特徴。ここでは契約農家の米を使い、自家製麺した2種類のビーフンを用意している。...
ビーフンだが、細くてヤワな麺を想像してもらっては困る。丸麺か幅広麺、麺はどちらかを選ぶが、ともに食感はもちもち。口当たりも良く、自家製であることを主張する。中国・湖南の郷土料理を紹介する都内でも数少ない専門店だ。 米で作るビーフンは現地では日常食。この店では調理法も汁、混ぜ、炒めと3つあり、さらに具材は8種あり好みで選択。つまり、楽しみ方は十人十色。一朝一夕では辿り着けないビーフンの奥深さを知るのだ。...
「ヴェヌゴパールさんが帰ってきた!」と、この店のオープン情報が駆け巡った際には、シェフの料理のファンが狂喜したという。東銀座の人気店『ダルマサーガラ』で腕をふるい、信奉者多数のヴェヌゴパールさんは、母国にしばらく帰っていたが、再びこの地で店を構えることにした次第。 メニューを見れば、ヴェヌゴパールさんのレパートリーの多さは一目瞭然。スペシャリテの“塩カレー”ことチキンウプカレーを筆頭にカレーの種類も豊富なら、南インド特有の軽...
漫画『もやしもん』でご存じの方も多いだろうが、「Oryzae(オリゼー)」は、酒や味噌、などの発酵に欠かせない麹菌「アスペルギルス・オリゼー」を指す。ここは、日本酒やワインといった醸造物と、発酵物を使った料理を楽しむ“醸し系”酒場だ。 「神亀酒造」の酒との出会いがきっかけで日本酒の世に魅せられた、と語る店主の渡辺竜太郎氏。自身の店では「食中酒としての日本酒の楽しさをもっと広めたい」と、季節の料理それぞれに対して、マッチする日...
~イモを潰さず食感を活かす角切りの野菜のポテサラ~ ジャガイモの他、きゅうり、ハムなどの具材をサイコロ状に切るのが特徴。マヨネーズで和えており、日本のポテトサラダに近いが、素材の食感が活かされている点が異なる。正月などハレの日に欠かせない食感豊かな料理だ。...
モンゴル出身の元力士・白馬関と、その母親が切り盛りする店。祖国の味を求め、若いモンゴル人力士たちが多く集う。供されるのは見た目も味も豪快な遊牧民の家庭料理。 中でも、羊肉を骨からナイフでこそぎながらいただく「チャンスン・マフ」は人気が高く、あちこちのテーブルでモウモウと蒸気をあげる。その下味は、モンゴルから取り寄せた岩塩のみで、野生味溢れる味わい。 爽やかな切れ味のウォッカと合わせれば、目前に広大な大地と青空が広がるよう。...
モンゴル出身の元力士・白馬関と、その母親が切り盛りする店。祖国の味を求め、若いモンゴル人力士たちが多く集う。 供されるのは見た目も味も豪快な遊牧民の家庭料理。中でも、羊肉を骨からナイフでこそぎながらいただく「チャンスン・マフ」は人気が高く、あちこちのテーブルでモウモウと蒸気をあげる。 その下味は、モンゴルから取り寄せた岩塩のみで、野生味溢れる味わい。爽やかな切れ味のウォッカと合わせれば、目前に広大...
年に数回行われる国民行事「ナーダム」の風物詩である屋台料理。カリカリに揚がった皮の中には、柔らかな羊の肉がたっぷり。1P¥200...
安さ自慢のチェーン店からアットホームな雰囲気の個人店まで、界隈には多くの焼肉店がひしめく。その中でも頭抜けた存在と評判なのが『慶』だ。 店主の山本汰毅さんは、伯父が営む青山の焼肉店を皮切りに六本木の『龍叶苑』などで肉の扱いや経営のノウハウを習得し、独立。「働いてきた店のいいところをすべて集約させた総集編」として自身の店をオープンさせた。 上質な部位を厚切りで提供する“マルトク!!!シリーズ”や、A5ランクの黒毛和牛のみ...
「サトコさん、自転車はお持ちですか?」 「いえ、持ってませんが」 「もしここにお住まいになるなら、ぜひ自転車を買うことをオススメします。日本橋、東京駅、それにお台場も自転車で行けるくらいの距離ですから。そうそう、それからこの周辺では『ベッラ ナポリ』は押さえておくべき店です。モチっと歯触りのよいピッツァがいただけますから」 そう言って今日も楽しそうにレストランを紹介してきた。そして案内されたのは、オープン当初話題になった...
店に入ると目に飛び込んでくるのが、色タイルで化粧を施された石窯。 ナポリで主流の対流式石窯を開発した職人の跡取りをわざわざ呼び寄せ、造り上げた本格派だ。モチッと歯触りのよいピッツァも現地の味を再現したもの。 粉や水、湿度などナポリとは異なる条件をクリアするため、研究に研究を重ねた独自のアプローチで極上の1枚を提供する。...
「ハンバーガーは肉、サンドイッチは野菜」というポリシーを貫くのは、下町バーガーショップの雄『シェイクツリー』。 バンズの代わりにパティを使ったワイルドアウト(¥1,450)は、まさに“意表をつく”ビジュアル。具材はトマトとレッドオニオン、チーズとシンプルで、そのぶん、どこから食べても、肉の力強い旨みが口のなかを占拠する。 バーテンダーが常駐しているため、ワインやハードリカーはもちろん、オリジナルカクテルも充実。お酒とと...
肉で野菜を挟むハンバーガーが錦糸町にあるのはご存知だろうか?「有吉くんの正直さんぽ」でも紹介され、本人のツイッターでも呟かれたことで、『シェイクツリー』は連日行列を生むほどの人気店となっている。 噛めば噛むほど肉汁が溢れ出すバーガーは、一口食べればそのジューシーさに虜になるようだ。さっそく有吉氏もハマったという“肉バーガー”を紹介していこう!...
東京の新名所『東京スカイツリー』が開業してまもなく半年。すっかり下町の〝顔〟となった感があるが、もうひとつ忘れてはならないのが、大正14年から、下町の酒好きの心を満たしてきた名居酒屋の存在だ。 新大橋通りと清澄通りが交わる森下交差点のほど近く。夕暮れどきともなれば『山利喜 本館』の大きな赤提灯を目指して、どこからともなく舌の肥えた酒客たちが集まってくる。...
昨年末にオープンしたばかりのバーで、店主の大野尚人さんが品書きのトップに据えたのが、レモンサワー。名代を謳う定番に加えて、苦・辛・甘・塩という4種の味も新たに発明。 そのすべてに酒と肴をこよなく愛し、日々研究に余念がない大野さんのアイデアが光っている。「誰もが飲んだことのある、一種のカクテル。それがレモンサワー」と語る大野さん。 確かに、レモンサワーは誰もが知る酒。バーだからベースの酒は基本、ジンが中心だが、その味わい...