浅草のメインストリートのひとつである雷門通りに百数十年続く老舗『尾張屋』はある。 『尾張屋』といえば、晩年の永井荷風や久保田万太郎など文豪に愛されたことでも有名。 彼らが好んで注文したのは「かしわ南蛮」である。アツアツの蕎麦の上に、豪快に盛りつけられた鶏むね肉とネギというシンプルながらも、間違いない美味しさを放つ同店の人気メニューのひとつである。 老舗で昼から一杯、粋じゃないか。...
……………………………………………………………………… 尾張屋の看板娘“浅草小町”こと田中すみが、もらったラブレターの使い道を晩年に聞かれて ”蕎麦屋の焚きつけに 使っちゃったわ” ……………………………………………………………………… 尾張屋といえば、晩年の永井荷風が毎日通った蕎麦屋として有名だ。いつも13時前の同じ席に陣取り、帽子もコートもとらないまま“かしわ南蛮”を食す。会話は一切なし。気に入らないのかと...
シンプルの極みともいえる蕎麦で、他では絶対にお目にかかれないメニューを打ち出したのが、この『おざわ』。雷門のある中心地から少し離れているものの、週末しか食べられない幻ランチなんだと誘って、女子の好奇心をかきたてる。 常連客の要望に応えるうち、今の形に行き着いたという、「太打ちざる」。太さ1cm、厚み2mmの極太蕎麦は、見た目のインパクトと、味わったことのない強いコシ、蕎麦の常識からは考えられない、“もぐもぐ”という食感がSN...
―どうして私が、こんな辺鄙な土地に住むの...?― 幸せな家庭を築くことを夢見て、コツコツと女としての人生の駒を進めてきた大手航空会社CAの美波(ミナミ)、27歳。 ルックス・収入・性格とともに完璧な港区男子・孝太郎と出会い、順調に婚約まで済ませた、まさに幸せの絶頂期。 「浅草に住もう」という提案に戸惑う美波だが、さらに彼の友人から「孝太郎は“下町の成り上がり”」と忠告を受ける。 そして、浅草で育った孝太郎...
開店と同時にすぐに満席になる『粋な一生』のラーメンは、店主が子供の頃に食べた町のラーメン屋さんを再現したいと完成させたラーメンです。 幼少期からの夢であったこだわりはスープに投影され、まず「動物系清湯スープ」(豚、鶏、野菜類を弱火でゆっくり煮込んだもの)、次に「魚介系スープ」(昆布、鯛のアラ、数種類の削り節、煮干しで煮込んだもの)、そして「白湯スープ」(豚、鶏、野菜を強火で12時間以上煮込んだもの)の3種類。 この3種...
2017年12月、ホテルエントランス脇に誕生したラグジュアリーレストラン。カウンター内に設置された暖炉のような薪窯で、薪火を活かしたステーキやロティサリーチキン、スペアリブなどを提供する。 宮崎県サイトーファームによる「齋藤牛」をはじめとする極上の食材を、ライブ感溢れる雰囲気の中でご堪能あれ。...
大変申し訳ないのだが、上野と言えば昔ながらの名店が多く、新しいお店と言えば最近話題になっていた『ナベノ-イズム』など数店舗くらいしか知らない自分がいる。 「ふふ、上野って聞くと、みんなパンダか上野公園くらいしか思い浮かばないでしょ?でもね、意外にこの界隈は住みやすくていい所なんだよ」 ワインで乾杯しながら、今一度竜二郎を見つめ直す。 深い緑色のニットとネクタイの組み合わせから彼のこだわりが垣間見られるが、テン...
「30歳のお誕生日、おめでとう」 麻里子は、30歳という節目の誕生日を高史に祝ってもらっていた。 高史が予約してくれていたのは、最近話題の『ナベノ-イズム』。以前、麻里子が行ってみたいと言ったのを覚えてくれていたようで、サプライズで連れて来てくれた。 その優しさが、よけいに麻里子を喜ばせた。 少し前までの麻里子の予定では、この日は大きなダイヤモンドの指輪が左手薬指できらめいているはずだった。まさか、...
ー数日前ー 「千晶、会いたかった」 隅田川沿いをふらふらと歩いていた千晶を、涼ちゃんは背後から包み込んだ。 その瞬間、千晶の中で長らく渦巻いていた、疑い、嫉妬、不安などの負の感情が一気に消えていく。 −ああ私、ずっと涼ちゃんに抱かれたかった。 抗いようのない本音に気づいてしまったら、もう強がっていられなかった。私は、やっぱり涼ちゃんが好きなんだ。そう認めるほかない。 「私...
男性から食事に誘われたら、必ずこう答える女がいる。 「メニューによります」 男をレストラン偏差値で査定する、高飛車美女ひな子が、中途半端なレストランに赴くことは決してない。 彼女に選ばれし男たちは、高飛車に肥えた彼女の舌を唸らせるべく、東京中の美食をめぐり、試行錯誤を繰り返す。 最近は、セレブ王子・久保と『Naveno-Ism』、『茶禅華』での2on2、M気質な港区おじさんジュニアとの『...
グルメな友人たちのSNSで頻繁に見てはいたが、窓から目前にスカイツリーを望む『ナベノイズム』の店内は、期待以上に素敵だった。 これから提供される、目にも舌にも美しい料理を想像すると心が踊る。 正木はすでに着席していて、千晶を認めると会釈をし、軽く手を挙げた。 「千晶さんは、いつもオシャレですね」 開口一番、正木は紳士的にそう言ってくれたが、その社交辞令的な言い方から、褒め言葉かどうか...
−今夜は、19時にここで。 プラチナ通りを歩きながら、正木から届いたLINEを確認する。 後輩・あずの紹介で初めて会った翌日から、彼とはほぼ毎日LINEのやりとりが続いていた。 彼は会っている時はもちろん、LINEのやりとりすら紳士的で優しく、常に気を遣ってくれるから居心地が良い。 随分前に予約していたのだという『ナベノイズム』に同行する相手に選んでくれたことも、素直に嬉しい。 ...
「いつまでも、姫のお兄さん扱いに甘んじていられませんからね」 先日の『ナベノイズム』での久保の一言が、ふと耳に蘇る。 -ずっと、食事だけの関係ってワケにも行かないのかしら。 そんな風に思うと、ひな子は何となく、胸の奥にむず痒さを感じてしまう。 男たちに蝶よ花よと扱われるのはもちろん嫌いではないし、気分が乗れば、多少イチャつくことだってある。ふざけて色っぽい駆け引きのような会話をするの...
夕暮れ時のその美しい景観に、ひな子は素直に感動と癒しを覚えた。 「姫、いかがですか。なかなかロマンチックな場所でしょう」 「本当に、素敵なところ...」 そして、早々に運ばれた『Nabeno-Ism』のシグネチャーであるアミューズ・ブーシュに、ひな子はさっそく心を奪われた。...
「ミシュランガイド東京2017」の一つ星をはじめ、本誌の「2016レストラン・オブ・イヤー」でグランプリにも輝くなど、多くの受賞歴を持つ浅草の話題店。 『ジョエル・ロブション』元総料理長を務めた渡辺雄一郎さんがエグゼクティブシェフとなり、腕を振るう本格派フレンチ。 浅草という立地を活かしながら、日本人シェフという出自も踏まえ、和食材を積極的に取り入れた独自色、独創的な料理が多くの人を虜に。ディナーコ...
11月21日発売の月刊誌『東京カレンダー』のカバーガールの米倉涼子さんは、実は「東京カレンダー」愛読者。「気になったお店を予約して、〝東京カレンダーを見て来ました〞と伝えたりしますよ」と、かなりの食通。 ドラマ撮影前夜は和食の惣菜と焼き魚を作ったそうで、話を聞く限り本当に食べることが好きそうだ。そんな米倉さんが、グランプリの『Nabeno-Ism』を訪れてコースをテイスティングした。 まず米倉さんが...
ミシュラン三ツ星に輝き続ける『ジョエル・ロブション』のエグゼクティブシェフを務め上げた渡辺雄一郎シェフが、待望の独立を果たした。料理人生の集大成に選んだ場所は、浅草駒形の隅田川沿い。 アミューズには駒形『種亀』の最中や御徒町『大心堂』の雷おこしが並び、スペシャリテには、両国にある『ほそ川』の朝挽きした蕎麦粉を使用。江戸ソバリエの資格を取得した際、特に感銘を受けた一軒で、シェフ自らが出勤前に取りに行く。...
ミシュランの星を世界で最も多く獲得した『ジョエル・ロブション』。その日本一号店である、恵比寿の『シャトーレストラン ジョエル・ロブション』のエグゼクティブシェフとして11年間支え、3つ星を9年間守り続けた渡辺雄一郎氏。 ジョエル・ロブションの元に21年間勤め上げた渡辺シェフが築いた、自身のメゾン『ナベノ-イズム』は浅草の駒形。隅田川のほとりで日ごと催される宴はいったいどんなものなのだろうか?...
すっぽんほど食材の良しあしと炊く技術がはっきり分かれるものはないように思う。クリアなスープを飲み進めても、最後のひと匙に泥臭さを感じる残念な例がある。そんな経験者にこそ訪れて欲しいのがここ、浅草寺裏にある『つち田』だ。 店主・土田裕氏の母上が開いた小料理屋『栗ちゃん』を父上が引き継ぐ形で約40年前に創業。ふぐを看板としてきたが、現在は浜名湖産を中心としたすっぽんが人気だ。...
過去に付き合ったり、関係を持った男たちは、なぜか皆、日比谷線沿線に住んでいた。 そんな、日比谷線の男たちと浮名を流してきた香織は、上京後立て続けにタワーマンションに住む2人の男と付き合ったが、どちらの恋もあっけなく終わった。その後は初めてのワンナイトで苦い思いを経験することになり、香織の恋愛遍歴は積み重なっていくが……。 日比谷線の女 vol.3:早稲田出身自称やり手営業マンと、八丁堀で迎えた苦い朝「久しぶりね」 ...
浅草で50年近く、ふぐやすっぽん、鱧(はも)料理などを手がけてきた店。おすすめはコラーゲンたっぷりで女性にも人気の高い「スッポン鍋コース」。国産の活すっぽんを酒で煮込み、身が柔らかくなったものを味つけして鍋にする。 すっぽん独特の深い味わいが滲み出たスープは絶品なので、〆の雑炊も欠かさず味わってほしい。橙(だいだい)を絞って作る自家製ポン酢もポイント。...
すっぽんほど食材の良しあしと炊く技術がはっきり分かれるものはないように思う。クリアなスープを飲み進めても、最後のひと匙に泥臭さを感じる残念な例がある。そんな苦手意識がある人にこそ訪れて欲しいのがここ、浅草寺裏にある『つち田』だ。 店主・土田裕氏の母上が開いた小料理屋『栗ちゃん』を父上が引き継ぐ形で1966年に創業。ふぐを看板としてきたが、現在は浜名湖産を中心としたすっぽんが人気だ。 基本コースの構成...
そして、スッポンである。『つち田』の鍋にはささがきしたごぼうと斜め切りしたネギのみが入る。豆腐など水気が出るものは加えない。せっかくの出汁の旨みを薄めてしまうからだ。 日本酒に漬けた胆嚢と心臓をつるり、レバーを塩とごま油でしゃくしゃくと嚙み、黄金色の出汁とコラーゲンたっぷりの身を流し込めば、翌朝を待つことなく身体は火照り、額が光る。 単純なのに、味も効能も深い。...
現在の三ノ輪付近は、その昔、吉原遊郭を中心に栄えたエリア。文明開化後、ハイカラなグルメとして登場したのが馬肉を使った桜鍋。淡白な馬肉をコクのある味噌だれで味わうスタイルは、明治38年創業のこの店が元祖だそう。 近年、高タンパク低カロリーな食材としても注目を集める馬肉は生食もOKなので、ユッケや馬刺しも安心して楽しめる。文化財に登録された店舗も魅力。...
隅田川クルーズの船着き場を見下ろすビルの上階にある『バンキーナ』は、旬の食材を使った料理が評判のレストラン。シェフ渾身の美味とともに常連客を魅了しているのが、雅な光を放つ東京スカイツリーだ。 メインダイニングで食事を楽しんだあとは、屋上スペースへ。夜風を感じながら、ロマンティックなひとときを過ごしてみてはいかがだろう。...
【隅田川花火大会】 隅田川クルーズの船着き場を見下ろすビルの上階にある『バンキーナ』は、旬の食材を使った料理が評判のレストラン。シェフ渾身の美味とともに常連客を魅了しているのが、雅な光を放つ東京スカイツリーだ。 隅田川花火大会当日は、その景観にもさらなる“華”が添えられる。メインダイニングで食事を楽しんだあとは、屋上スペースへ。夜風を感じながら、ロマンティックなひとときを過ごしてみてはいかがだろう。...
白地に〝けい吾〞の文字も凛々しい暖簾をくぐれば、木肌の温もりが伝わる憩いの空間。フラットなカウンターの向こうで、ひとり寡黙に料理を作るのはご主人の阿部圭吾氏。西麻布の日本料理店で基礎を学び、さらに好きな蕎麦を極めるべく神保町の名店『松翁』で修業。今年の4月、晴れて独立を果たした気鋭の料理人だ。 「和食は引き算の面白さがある。そこが魅力」とは阿部氏。素材の持ち味を最大限に引き出すため、如何にシンプルに、かつ独自の味を打ち出して...
23時までやっているこちらのバー。実は花やしきからスカイツリーは、タクシーに乗れば10分とかからずに到着する。 窓の外には大迫力の®東京スカイツリー。日によって“粋”“雅”と、ライティングを変えるスカイツリーをこれほど至近で眺められるレストランはそうそうない。 店内のどの位置からも壮大な夜景を見ることができるが、デートで訪れるなら、狙うは右奥のソファ席。素晴らしい景観に加え、料理やワインのコストパフォーマンスも抜群! ...
【隅田川花火大会】 隅田川と言えば、欠かせないのがスカイツリー。大迫力の東京スカイツリー越しに隅田川の花火まで堪能できる、まさに天空ラウンジの名にふさわしい贅沢な場所だ。隅田川のアフター花火に立ち寄るのもおすすめ。 日によって“粋”“雅”と、ライティングを変えるスカイツリーを、これほど至近で眺められるレストランはそうそうない。店内のどの位置からも壮大な夜景を見ることができるが、デートで訪れるなら、狙うは右奥のソファ席。...
浅草なのに『銀座ブラジル』、しかもシカゴというお店の2階という、ユニークかつ昔ながらの古き良き喫茶店があるという。 店名の由来は昭和初期創業で今は無き本店が、銀座にあったから。...
一件目にご紹介するのは、新仲見世商店街の一角にある小さな喫茶店。 「浅草なのに『銀座ブラジル』、しかもシカゴというお店の2階という、ユニークかつ昔ながらの古き良き喫茶店があります」雄飛さんから紹介された。 店名の由来は昭和初期創業で今は無き本店が、銀座にあったからだという。...
老舗喫茶店の定番メニューといえばナポリタン。誰もが一度は体験しておくべき、名物ナポリタンが、喫茶レストラン『ロッジ赤石』にある。 観音裏を抜けた住宅街に佇む同店は、昭和のゲーム台がそのままテーブルに使われるなど、微笑ましいほどにアットホーム。観光客であふれるTHE 浅草とは異なる下町の素顔がそこにはある。 この店のナポリタンは言わずと知れた看板メニューだが、具材は非常にシンプル。甘み、酸味、コクのバランスが絶妙な味の決...
喫茶店の定番メニューといえばナポリタン。それも今では、ピンと来る女子は少ないという。そんな女子が一度は体験しておくべき、これぞ!なナポリタンが、喫茶レストラン『ロッジ赤石』にある。 観音裏を抜けた住宅街に佇む同店は、昭和のゲーム台がそのままテーブルに使われるなど、微笑ましいほどにアットホーム。観光客であふれるTHE 浅草とは異なる下町の素顔がそこにはある。 この店のナポリタンは言わずと知れた看板メニューだが、具材は非常...
『珈琲アロマ』は昭和39年創業、カウンター16席のみの小さな店。それでもオープンから閉店まで、絶えず常連客が訪れる。 最初は居心地の悪さを覚えるが、コーヒー1杯を飲み終わるころには、江戸っ子の主人と自然に会話が弾んだりする。これぞ、駅前のカフェでは出会うことのない体験だ。...
街のあちこちに強烈な地元感が漂う店がある浅草は、よそ者にはハードルが高いことも。でも、そこに一歩踏み出すスリルを共有できれば、二人の距離はぐっと縮まるというもの。 『珈琲アロマ』は昭和39年創業、カウンター16席のみの小さな店。それでもオープンから閉店まで、絶えず常連客が訪れる。 最初は居心地の悪さを覚えるが、コーヒー1杯を飲み終わるころには、江戸っ子の主人と自然に会話が弾んだりする。これぞ、駅前のカフェでは出会うこと...