日本料理という奥深い題材を
やわらかく解きほぐし、
温かいもてなしのなかで
正統派和食の醍醐味を伝える

みゆき通りに立つ銀座5丁目のビルの5階。
店内は檜のカウンターを中心にした木のぬくもりを感じる穏やかな和の空間。
奥からは朗らかな人柄の店主、山西和文氏の威勢のいい声が響きわたる。

2009年オープンした『朱雀』名は比較的早くから食通たちの間で話題になっていた。
それもそのはず。
オーナー兼店主の山西氏は、ミシュラン一つ星の『銀座 うち山』の立ち上げ時から板前として修業を積み、赤坂の名店『割烹 津やま』では5年ほど花板を務めた実力の持ち主だ。

コースには先付けから〆ものまで少量ずつ10品以上が並び、多彩な味を楽しませてくれる。
きんぴらや卯の花など、一見すると家庭的な料理も、かけられた手間に比例して驚くほど旨味や食感が洗練されており、すべての料理が実に印象深く心に刻まれる。
最後に供される「鯛茶漬け」も名物で、これを目当てに訪れる常連客も多い。

一品に宿るこだわりは、食材や調理ばかりか、器にまで行き届く。
歴史ある料亭から譲り受けた骨董品から、西岡小十氏や辻村史朗氏をはじめとする高名な陶芸家の作品、時には魯山人のお猪口がお目見えすることもある。
銀座の和食店には珍しく、日曜の夜に営業しているのもうれしい。
お伝えいただければ幸いです。