7年を機に屋号もコンセプトも一新
東京人の料理長が地方の郷土料理に出逢い
その感性で創りあげた新しい和食

スタイリッシュで遊び心あふれる会席料理で定評のあった「暗闇坂 宮下 神楽」が2017年6月にコンセプトも新たに「日本料理 斗南」として生まれ変わった。
神楽坂の小道を入った白壁の日本家屋と玄関へ続く石畳、引き戸の向こうには左官職人が丁寧に塗った漆喰の土壁や島根県の吉原木工所の組子扉、瓦職人による瓦の会席盆といった日本の伝統工芸の素晴らしさを目の当たりにできる。
古来からの技術を生かしたモダンな設えは今の神楽坂を象徴しているかのようだ。

料理長、中田大輔氏は和食一筋、「暗闇坂 宮下」での腕を認められ抜擢された34歳の実力者である。
東京で生まれ育ったゆえに郷土料理というものとは馴染みがなかった。羨望なのか、その土地で受け継がれているものを大切にしたいという想いが強い。「伝えていかなければいけないと思いました。地方の食材や文化を広げることが使命だと考えています」と言う。
そして料理長になったこの店で地方の食材や文化を東京人の感性を融合した新しい和食を創りあげたのである

食材はできる限り産地直送を心がけ、時間を見つけては地方へ出向き良い食材を探し歩く。出逢った食材と真摯に向き合い伝統ある日本料理の技巧で料理していくと未知なる味が生まれてくるのだと。
盛り付けには色のバランスを考え、見て楽しくなるような皿を目指す。
スペシャリテの「葛しゃぶ」はかつおだしに葛を溶き、熱々に焼いた陶板の上からかけていただく。
ジュワッとした音とかつおの香りに包まれ五感が歓喜をあげる。

日本酒は淡麗辛口を中心に季節感を重視して取り揃えている。月ごとに変えるこだわりに日本酒を目当てに訪れるほど。
日本酒のボジョレー・ヌーボーと呼ばれる「秋あがり」「ひやおろし」などリスト以外にも15種類くらい用意されているので「面白いものある?」と訊ねるとレアなものが出てくることも。料理に合わせたグラスペアリングも試してみたい。
情緒ある神楽坂の街に馴染む「日本料理 斗南」。
伝統ある郷土料理の新たな形を見出した魅力あふれる料理と酒でしっぽりと大人の時間を過ごしたい。
お伝えいただければ幸いです。